第一王女と、他国の英雄 1
トゥルイヤ王国の最も有名な英雄、『雷鳴の騎士』ルクシオウス・ミッドアイスラ。
その弟子である、ザウドック・ミッドアイスラ。藍色の髪を持つ彼は、今年、十七歳になる。――彼はその年、トゥルイヤ王国内で起こった魔物の活性化において活躍をした。
二年ほど前に、カインズ王国のヴァンが『破壊神』として名を広めた事件により、トゥルイヤ王国の周辺は平和である。トゥルイヤ王国はカインズ王国の同盟国というのもあって、手を出そうという者はいない。問題がないからこそ、ザウドック・ミッドアイスラの名が広まるほどの事件は中々起きず、今回、ようやく、ザウドック・ミッドアイスラは、今回起きた大規模な魔物の活性化においての活躍と、今までこつこつと積み重ねてきた功績によって、二つ名を賜る事になった。『雷獣の騎士』というその呼び名の由来は、彼が師である『雷鳴の騎士』と違い、召喚獣を一匹持っているからである。
一年前に彼が呼び出した召喚獣は、《サンダーウルフ》と呼ばれる、雷を扱う狼だった。
その狼と共に、彼は進んで国内の問題を解決していった。
何故、彼がそんなにも生き急ぐように実績を求めているのかというのは、国内では噂されていることの一つであった。
「ルクシオウス!! 俺、ようやく、二つ名もらえた!!」
「おう、良かったな」
そして、ザウドック・ミッドアイスラがどうしてそこまで実績を求めていたのかを良く知る人物——ルクシオウス・ミッドアイスラは、ザウドックの言葉に笑みを零す。
「これで……フェール様に結婚してくださいって、言いに行ける!!」
ザウドックは嬉しそうに声をあげる。
ザウドック・ミッドアイスラは、隣国の第一王女であるフェール・カインズに恋慕の思いを思っている。それは、三年ほど前に第一王女のフェール・カインズに出会ってから、ずっと抱えていた気持ちだった。
フェールは、ザウドックに言ったのだ。
今は、思いに応えないと。そして、ザウドックが隣国の第一王女を娶れるぐらいの名声を手にしてもなお、フェールの事を好いていれば気持ちに応えるとそういってくれていたのだ。
ザウドックはあれ以来、フェールに会えてはいない。ただ、手紙でのやりとりは、ずっとこの三年間続けてきていた。
ザウドックはフェールと手紙のやり取りをずっとしてきて、フェールの人柄などを知って、そして、もっとフェール・カインズという存在に惹かれた。
フェールに結婚してくださいと、そう言いに行きたいという思いがあったからこそ、一心にザウドックは頑張り続けていたのだ。名声を高めたのは、フェールと結婚したいという願望があったから。
その邪な欲望があったからこそ、頑張り続けたザウドックである。
「お前も、なんだかんだで一途な奴だよな。ヴァンも相当だと思うけれど、三年経っても、第一王女を思っているとかさ」
「……ルクシオウスは、全然、一人の相手決めないよな」
「俺は別にいいんだよ。女に縛られる気も今の所ないから」
ルクシオウスは笑いながら、そんな事を言う。
『雷鳴の騎士』ルクシオウス・ミッドアイスラも、『火炎の魔法師』ディグ・マラナラも、特定の女性に対する興味はないようだ。最も、ディグ・マラナラに関しては、カインズ王国の第二王女に常に求婚されている状況ではあるが。
「それで、ちゃんと、陛下には許可を取ったのか?」
「ああ。ちゃんと言った。褒美に何が欲しいか聞かれたから、フェール様と結婚したいって」
ザウドックの言葉に、ルクシオウスは心の底から面白そうに笑っていた。
ルクシオウスとしてみれば、自分の弟子が恋に一生懸命なのは、見ていて面白いものだった。
「だから、今度、カインズ王国に行く事になったんだ。そこで、結婚してくださいって言ってくる。陛下がカインズ王国に話は通してくれるって言ってたし。ただ、フェール様の意志次第だって言ってたけど!」
ザウドックはそう口にしながら、フェールの事を思って、顔を綻ばせていた。
(フェール様に久しぶりに会えるのが嬉しい。断られるかもしれないけれど、断られたとしても、やっぱり、フェール様に会えるのは嬉しいと思う。フェール様……どれだけ綺麗になっているだろうか)
ザウドックは、もしかしたら、断られるかもしれないとしても、フェール・カインズに求婚できる機会が出来ただけでも嬉しかった。そして、久しぶりにフェールに会えるのが、楽しみで仕方がなかった。
フェールはきっと綺麗になっている。
そんな想像が出来て、早く会いたいという思いで一杯だった。
ザウドック・ミッドアイスラは、フェール・カインズに会える事を楽しみにしている。そして、その邂逅の場は、まもなく訪れるのだ。
―――第一王女と、他国の英雄 1
(少年は第一王女への恋慕から努力を続けて、求婚する機会を手にした)
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