211.VSシザス帝国について 4
トージ公爵領からシザス帝国の帝都に向けて存在するあらゆるものが障害物として破壊されつくしていた。命まで奪う事はしていないものの、様々な物を壊して行進していくヴァンたち。
壊された側からして見れば、何が起こっているのか分からないものだ。自然災害か、それとも魔物の反乱か——、中には召喚獣を連れているから、誰か恐ろしい存在を怒らせたのではないかという正解を導き出しているものもいたが、実際に何が起こっているの、か破壊された側からしてみれば分からなかった。
一先ず、彼らは帝都へと、使いを出す事を決めた。
……その召喚獣達が帝都を目指している事なども知らないままに。
さて、ヴァン達は帝都へと直行していた。
途中で見かけたあらゆるものを轢きながら、ただ直行する。
そうしていれば徐々に帝都へと近づいていく。帝都と隣接している領地では迫ってくるヴァン達を見かけて、目を見張り、だけれどもこのまま襲撃されるわけにもいかないとその領地に居る魔法師達が姿を現す。
「貴様ら、止まれ!」
「ここを何処だと——!!」
「煩い」
魔法師達は、ヴァン達の行く手を阻もうとして目の前に出る。が、彼らが魔法を完成するよりも前にヴァンの魔法が完成する。
ヴァンにとって、目の前の存在は邪魔な存在でしかなかった。
だからこそ、魔法を使って排除する。命までは奪う気はなかったのだが、排除しようとしても向かって来たので、一人の命はさらっと奪った。
「邪魔するなら、こいつみたいに殺す」
と、ヴァンに睨まれれば、魔法師達はもう戦意喪失していた。
どれだけ魔法を放っても、止まらない。それどころか、自分達の放つものよりもずっと、強大な魔法を放ってくるのだ。加えて、何度も向かっていけば、殺される。
目の前の存在は、こちらを簡単に殺す事が出来るだけの力を持ち合わせていると理解してしまった。敵うはずもない敵を前にした時、人はどうするかといえば、戦意喪失するものである。自分ではどうあがいてもどうしようもない者が居るのだと、その魔法師達は瞬時に理解してしまった。
だからこそ、降伏の言葉を口にする。
「わ、私達は貴方の邪魔をしません。なので、と、止まっていただけないでしょうか!! このままでは街に被害が——」
「知るか!通るのに邪魔だから破壊するだけだ。別に殺す気はない。というか、恨むなら俺じゃなくて、この国を恨め」
ヴァンは召喚獣達を止めない。降伏をしてくる連中が居ようとも、ヴァンには関係がなかった。ヴァンはとりあえず、ナディアの元へと直行したかった。邪魔するものは、何でも排除したかった。そして、憂さ晴らしついでに壊しまくっていた。
「く、国が何をしたのですか?」
ナディアやビィタリアを攫っている事は、本当に限られた者達にしか知らされていない事だった。その隣接する領土の魔法師達も知らなかったのだ。それだけ内密に、誘拐は行われていた。
「俺のナディアを攫った。だから、俺はこの国を許さない」
それだけを言い放って、ヴァンはその魔法師達を置いてドドドドドッと音を立てながらまた駆け出す。そして、大きな街を真正面に見据える。結界が張ってあったが、それをいとも簡単に無効化すると、そのまま突撃した。
その街の領主は帝王に近い立場に居るものだったので、ナディアやビィタリアを誘拐する計画についても知っていた。そのため、カインズ王国やトゥルイヤ王国で動きがあるだろう事も予想していた。だが、こんなに早い段階で敵が攻め込んでくるなどといった事は想像さえもしていなかった。だからこそ、狼狽していた。
「な、なんだ、あれは!」
結界を無効化し、突撃してくる召喚獣達にその領主が驚愕するのも当然であった。
「こ、こうなったら——アレを出せ!!」
「アレを? こんな街中で出してどうする気ですか!!」
「しかし、アレを出さなければあの迫ってくる者達には対処できないだろう!!」
領主達は領主の館でそのような会話を交わしていた。
――そして、ヴァン達が街を破壊しながらも直行している中で、領主達のいうアレが出現する。
それは、様々な魔物が合わさって出来た合成獣。歪な見た目を持つ数匹の獣。二本足で立つ者もいれば、四足の犬のような者もいる。
その合成獣達は単純な命令をこなす事は出来ても、細かい指示まではこなす事が出来ない。その程度の知能しか持ち合わせていない。だからこそ、その合成獣達はヴァン達を止めるという命令をこなそうと動く際に、目の前に何の関係のない一般市民がいようとも気にせず動いた。
その結果、命が失われていく。
街は混乱に陥っている。外から召喚獣を引き連れたヴァンが突撃しているのに加えて、内側から合成獣達が現れたのだからそれも当然である。
「邪魔するのなら、何であろうとも潰す」
ヴァンは目の前の合成獣達を見据えて冷たく言い放った。
―――VSシザス帝国について 4
(邪魔する障害物は何が何でも潰すと少年は宣言する。合成獣が現れても彼は動じない)
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