第11話 6回目のICD作動

2018年5月19日(土)


この日の夜、昔からやっているバンドの練習でスタジオに来ていた。練習が終わりロビーで座って話していると、頭がボーッとなって体が前に倒れていき、テーブルに頭が着く手前で、また背中を大きな板でおもいっきり叩かれたようなあの衝撃を感じた。バンドのリーダーの「大丈夫か!」の声も聞こえた。あの初めて倒れた夜の現場に居合わせたこの人でも、目の前で倒れる姿には驚いたようだった。次の週が検診だったので病院には行かず、この日はリーダーがわざわざ家まで送り届けてくれた。ICDの衝撃を受けた後は恐怖で、車の中でも足の震えが止まらなかった。意識がある段階での作動で衝撃を体感したのは2度目だった。回数を重ねる度に慣れるどころか恐怖心が増していくものだと思った。

もうこの頃、出掛けるのも人と会うのも億劫で、いろんな音楽の誘いも断るようになり、町内の団体からも抜け、地元の同級生の誘いにも何かしら理由をつけて断るようになっていた。通ってたカフェもマスターが病気で亡くなり、奥さんが店を続けていたが、月1回の軽音クラブの部会にいく程度になった。人と会う事を、全く無くしてしまったら駄目になりそうなので、無理にでもバンドと軽音クラブは続けようと思った。

家でも嫁とはほとんど会話もしなくなった。僕のせいで嫁には息苦しい生活をさせていると思う。嫁まで精神的に病んでしまってるんじゃないかと思う。ほんとに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。それでも休日はできるだけ家族と過ごすようにしている。僕は人と接する職業でもなく、職場でも家でも会話どころか笑わなくもなっていた。自分でも分かっているのに、できないのは何故だか分からない。

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