第9話 4回目のICD作動

2014年8月11日(月)


以前の入院から朝食もきっちり食べて、夜更かしもできるだけしないようにして、食事と睡眠をかなり意識して生活するようになった。

この頃から音楽が好きな人が集まるカフェに通うようになった。海が見える静かなカフェで、派手な音楽はできないがサックスも吹けた。マスターもよくしてくれて、その地域の軽音クラブにも入れてもらった。仕事が終わってからでも電車に乗って行き、いい気分転換になった。

音楽に夢中になってるときはいろんな不安から解放されたし、いろんな人と出会うことができた。子供の頃から音楽を習わせてくれた親に感謝した。


この日の朝も出勤の準備をし、リビングのソファーに座ってテレビを見ていた。そろそろ立ち上がり行こうと思ったら、目の前がカーペットだった。何が起こったか分からず、とりあえず立ち上がり鞄を持って行こうとした。しかし顔が痛くて何かおかしいと思い、しばらくしてやっと何が起こったかわかった。こんなに自分でも分からないくらい、意識を消失してしまうのかと怖かった。嫁は浴室の掃除をしていたので見ていなかった。誰もいないとこで一人で倒れる怖さを知った。すぐに嫁に報告しに行き、頭を打ってるかもしれないので救急車を呼んでくれた。僕は救急車に乗せられ、高速道路を走りまたいつもの病院に運ばれた。

今回は前の反省を生かし、食事と睡眠はきっちとり、カリウム剤も飲んでいたのになぜ、という気持ちが強かった。主治医にその事を伝えても、この病気は元気な人が突然倒れる病気なので、起こるときには起こると言われた。続く仕事の忙しさと、前回の入院からいつ倒れるかわからない恐怖と不安を抱えていて、主治医に色々打ち明けているうちに、どうしていいか分からず泣いてしまった。主治医にいろんなストレスが、かなり溜まってると言われた。自分でもストレスはどうにもできないと思った。主治医に精神安定剤もたまに飲んでいると報告した。

嫁が車で迎えに来てくれて、昼には病院を出た。そのまま職場へ向かった。僕の職場は身内の会社だ。今月から給料を上げてくれると聞いていた。これまでもかなり上げてくていた。僕もそれなりに休みも少なく頑張ってはいたが、こんな体でそこまで上げてもらうと、その度にかなりプレッシャーに感じていた。今回の事で更に思いが強くなり、嫁と社長に話をしに行った。それを受け入れてもらうどころか、この日は仕事を休んでいるにも関わらず、家族で夜ご飯でも食べて来いとお金をくれた。こういうのがすごく辛かった。そして現在も給料は上げ続けてくれている。お金よりもう少し休みが欲しいとは、決して口に出せなかった。

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