第5話 退院後

退院した翌日から仕事復帰した。車の運転ができなくなった以外はそれまでと何も変わらなかった。趣味のサックスも吹けたし、バンドの練習場所も電車で行けるスタジオを選んでくれた。

自分でも病気だと意識してなかったし、誰も僕を病人扱いしなかった。年に数回、ICDのチェックをするために病院に通う時だけ、自分が病気だと思い出す程度だった。この頃のICDのチェックは、パソコンのマウスのような物を胸の上に置かれ、技師がパソコンのような物でデータを確認していた。その時に心臓の動きを速くされたり遅くされたり操られるのが怖くて気持ち悪かった。

その後、2人の子供を授かった。ただ一つ気になることがあった。ちょうどこの病気が発覚する前から子供を作る計画をしていた。手術をして退院後に気付いた事だが、性欲がかなり薄れているように思った。病院に行った時に主治医にこの事を相談しホルモンの検査をしたが異常はないと言われた。

今思えばこの頃から無意識ではあるが、この病気の事が精神的に影響を与え始めていたのかもしれない。

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