どたばたの果てに待ち受けるラスト。思わず胸が熱くなる

 「おっぱい」タグの小説を巡回して読み漁るのが私の日課だが、中でも一際異彩を放っていたのがこの作品である。
 大抵のおっぱい小説は脳死で「おっぱい!おっぱい!」と叫ぶ下品で醜悪なものが殆どだが(それもまた良し)、この『S県立さいたま高等学校封鎖事件』はそういった下劣な連中を少し離れた場所で観察し、その滑稽さやむさ苦しさをユーモアラスに仕立て上げている。正に稀代の傑作だ。
 しかし、それだけでは終わらないのが今作の凄いところ。カリスマ溢れる主人公、雄一郎と愉快な仲間たち。全力で馬鹿をやる彼らの姿を見ていると、何故か胸が熱くなるのだ。こんな青春を送りたかった。戸松氏の才能に脱帽。