第3話 ざわざわ
胸のあたりにネズミがいるの。ざわざわするの。
猫とか犬でない、ネズミなの。
ネズミ色のネズミ。
騒がしくて。落ち着かない。
「静かにしてよ。うるさい!」
これ言うと、もっと騒ぐのよ、このネズミは。
いつも午前8時。
この時間は落ち着かない。緊張してる。
ドキドキするの。息が苦しくなる。そして、ざわざわ、が始まる。
今日は休みなのに。休みの日はいつもネズミが騒ぐ。
「ある日、ネズミさん、いつもこんなに動いて、疲れないの?」
と問いかけてみた。
なんか、静かになった。
また、ざわざわ始まった。
「ネズミさん、今日は休みなの。静かにしてよ。」
ネズミの方が話しかけてきた。
『あなたこそ、休みなのに、頭の中は仕事してる。スケジュールがいっぱいじゃないですか?』
「だって、これをしないと、仕事が進まないのよ。」
『だから、僕も休めないんだよ。
あのね、仕事の時と全く同じだよ。
なんかね、僕の周りがトゲトゲするの。
だから、じっとしてられん無いんだよ。』
「そんなこと、言ったって。」
『この、トゲトゲが続くと…。』
「続くと?」
『僕、死んじゃうかも。』
「どうなるの?」
『僕が死んじゃうと、ボコンボコンも、ふかふかも、トゲトゲも無くなるね。嬉しいとか、気持ちいいとか、危機のサインが分からなくなるってこと。』
「それじゃ、ダメじゃない」
『そうだよ。だから、大事にしてよ。』
「どうすればいいの?」
『少しの時間でもいいから、ふわふわな事して、トゲトゲを取ってよ。』
「ふわふわな事ねえ。」
『好きな事をその1時間でもいいから、仕事とは全く関係のないことをしてくれる?』
「これを今書いてるとどう?」
『トゲトゲ丸くなって来たよ。』
「そうか、自分の、ざわざわの吐き出し方が分かったような気がする。ネズミさん、ありがとう。」
『そうだよ。僕は、あたたなんだから、これからもずっと、可愛がってね。』
心の闇から光を求めて。 miyuz @miyuz0302
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