シモーヌ編 つらさを数値化
そうしてコーネリアス号に一人で暮らすことになったシオだったが、その様子について、ビアンカの証言を基に触れていこうかな。
初日。シオは
「ごめん……しばらく一人にしてくれるかな……」
「承知いたしました」
人間に決して歯向かうことのない
「ごめんね。監視は続けなきゃならないから」
言うと、シオは、
「うん。分かってる。でも……話はできない……」
なんとか口にしてベッドに横になり、両手で顔を覆った。
『自分が生きていた時代から二千年以上経っていること』
『コーネリアス号の乗員全員がもういないこと』
『なのに自分はこうして透明な体を持ってこの世界に生まれてしまったこと』
『何より、レックスと
それらがのしかかってきて、圧し潰されそうになってるんだろうと思う。
ビアンカとしては、それをただ見守ることしかできなかった。ビアンカはそれに加えて『アラニーズとして生まれた』という大きな事情はあったが、だからといって、
『ビアンカに比べれば普通の人間に近い姿で生まれただけでもマシだろ!』
と言うのは違うと思う。ビアンカほどじゃなくても、つらいのはつらいんだ。その事実を無視するのは俺は正しいとは思わない。
地球人はとかく、
『自分の方が大変だ!』
『他にもっと大変な人はいる!』
などと、<不幸の度合い>ですらマウントを取ろうという習性さえあった。それがいかに無意味なのか、今なら分かる。<つらさ>なんてのはあくまで主観的なものだ。当人が『つらい』と感じているならそれはつらいんだ。他の誰かのそれと比べるようなものじゃない。
そうやって他者のつらさと比べたって数値化して比較できるわけでもなし、『どっちがよりつらい』とか不毛なだけだろ。そもそも、バイタルサインなどを計測してそして身体的な反応から『つらさを数値化』したところで、それで自分のつらさの方が軽いと判定されて納得できるか?
そんなことで、
『お前の方がつらさを感じてないんだから我慢しろ!』
と言われて納得できるのか? 少なくとも俺は納得できないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます