シモーヌ編 学者根性
新暦〇〇三六年三月二十五日
でまあ、ここからはシモーヌの学者根性を見せられることになった。
ちなみに<臍の緒>は透明じゃない。つまり、『母体ではない』という判定になっているんだろう。むしろ<胎児の体の一部>と見做されているわけだな。
胎児は、
ビアンカの時にも、特異な形での妊娠だったこともあり、大事を取って概要以外の記録は取っていない。
メイガスの場合はそもそもラケシスが生まれてからだったから記録は取れてないしな。
だからこそシモーヌにとってはまたとないチャンスというわけだ。あの不定形生物の中で
カメラで自分の腹を撮り、確実に記録として残すつもりのようだ。
俺としては彼女がそれを望むなら反対する理由もない。別に、
『我が子を研究材料にされてる』
みたいな感覚もない。何かの実験に使われるのならそれは勘弁してほしいが、ただ記録を取るだけだしな。
それにその記録が、今後活かされていく可能性だってないわけじゃない。
とは言え、地球人社会では<人工子宮>は何千年も前に実用化されており、それを用いた妊娠の経過を詳細に記録したものはあるものの、その一方で、実際の生身の母体の中にいる胎児の発育を記録したものはさすがになかった。
だから本当に学術的にも超貴重なそれになるわけだ。学者としてはこんなチャンスはそれこそ逃せないだろう。でも、ビアンカが
だから愛せる。自身の好奇心ばかりを優先して相手の気持ちを慮ることがないような女性だったら、結婚はしてなかったよ。
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