灯編 六本足のキューピッド
新暦〇〇三五年七月二十日
そうして、ケイン、イザベラ、キャサリンの三人が正式に加わり、ビクキアテグ村はまた少し大きくなった。それを見て、
「なんか、私も子供が欲しくなってきたかな」
なるほど確かに、ルコアをはじめとして、
するとビアンカも、
「今は私も子供達のことで手一杯だから、少佐のこと、任せてもいいよ」
と、内心では決して穏やかじゃないのは事実だとしても、それでも『
これまでにも何度も言ってきたことだが、野生における<ハーレム>は、
『雄が複数の雌をはべらせている』
わけじゃない。あくまで、
『複数の雌が優れた雄を共有してる』
だけなんだ。決して雄にとってばかり都合のいい仕組みじゃない。それを勘違いした地球人があれこれ言ってるだけでしかない。だから、
『何人もの女性をはべらせて不快だ!』
なんて戯言もここには届かない。地球人の価値観を押し付けるのはやめることだ。
ここにいる<地球人>は、俺一人。他は全員、<
何千年か後にはまたそれも変わってくるかもしれないが、少なくとも今は、ビアンカは
「さあて、そういうことなら、
ニヤアとどこか凶悪さも感じさせる笑みを浮かべつつ言った
「お手柔らかに頼むよ。僕は本当は小心者なんだ」
父親としては娘のそういうのに対して複雑な心境がないと言ったら嘘になるが、これも結局は<地球人の感覚>でしかないからな。野生の動物はそんなこといちいち気にしないだろう。
で、ケイン達のための<育児室>に連なる<前室>だったものを今度は、
<
へと作り変えて、いよいよそういうことになったってわけだ。
<年貢の納め時>
ってことだったのかもしれないな。
後で聞いた話だと、実は、
快活で大胆なように見える
なのに、次に来たのはなんとケイン達だったという。本当に思いがけないことがおこる世界だよ。それを思うと、いろいろ吹っ切れたというのもあったらしい。
その踏ん切りを付けさせてくれたケイン達は、ある意味じゃ、
<キューピッド>
だったのかもしない。
<六本足のキューピッド>
だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます