灯編 肉食の小型の獣
新暦〇〇三五年五月三日
『<人間としての理性>が、
これがもし事実なら、明確な人間性を獲得する前のアラニーズは、やっぱり、本能に従って共食いをする可能性が高い。
卵胎生なので、<授乳>の必要がない。子供が母親に襲い掛かって食おうとしても別に何も困らない。母親の体内から外に出た瞬間に、子供にとって自分以外はすべて<敵>か<敵以外>かでしかないんだ。
しかも、
『敵は殺して食う』
『敵以外も殺して食う』
でも何も問題がない。あくまで力が弱いからむしろ<捕食される側>になることが多いというだけで、<肉食の小型の獣>と同じなんだよ。
そう考えて対処した方がいいと思う。しかし、ビアンカがそうだったように、人間としての認識がちゃんと育てば、単なる<食欲>として制御できる可能性はある。そして、<力>を向ける相手をしっかりと理解させてあげられれば。
『<力>は、自分や自分の家族や仲間を守るためにあるものだ。家族や仲間を虐げるためにあるものじゃない。<外敵>と戦うためにあるんだ』
ということをな。ビアンカだってそう認識してるから制御できてるんだ。
かつての地球においては、自分達のコミュニティ以外のコミュニティも<外敵>と認識されがちだったが、<世界>があくまで自分の見えてる範囲、知っている範囲だけだった頃には、それ以外にいるものは<得体の知れない存在>だっただろうが、今はもうそうじゃないことはすぐに分かるし、それをちゃんと教えていけば、
『自分達のコミュニティ以外は敵だ』
みたいに考えなくて済むんだよ。ここにいる<人間>の中に明確な<敵>はいない。考え方の違いがあるだけだ。
だから
そういうことだ。
と考えつつ、同時に、用心は怠らない。<ビアンカの子供達>についてもな。
しかも
「それでいいな?」
俺はビアンカにそう尋ねた。
「はい、それで結構です」
ビアンカもしっかりと応えてくれる。
こうして、孵卵器を三つ、自動運転のローバーを使って、ビクキアテグ村に届けた。それを、育児室に設置。さらにセシリアを、アリアンに迎えに来てもらってビクキアテグ村に派遣。これまでに判明している
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