ホビットMk-Ⅰ編 バケットホイールエクスカベーター

新暦〇〇三四年十二月六日




こうして夜までには試掘用ロボットが完成。試運転も問題なく終わり、いよいよ試掘を開始する。


そのために<ボーキサイト鉱床>へと向かうんだが、たった数十メートルを移動するのに一晩掛かった。


確かに遅い。試掘用ロボットの大きさは、高さ八メートル幅十メートル奥行十三メートルの、さっきも言ったように<変な形の建物>って印象の外見をしている。<巨大人型ロボット>が実際に作れる技術があるんだからもっと機敏に動けるようにできるんじゃないか?と思うだろうが、別にキビキビ動かす必要がそもそもない上に稼働中は基本的にがっちり固定するものだから、それで十分なんだと。


機敏に動くための機構が無駄になるんだよ。本来の運用をしてる限りは。実用性合理性が最優先で<ロマン>はどうでもいいということだ。


まあ、当然だな。


で、<変な形の建物>の内側で、地面を掘削し、鉱物を採取する。今回は地上からの<露天掘り>方式だから下向きに掘るが、掘削部分は横にも上にも向けられるそうだから、坑道内でも使えるとのこと。加えて、あくまで<試掘>用なので、<バケットホイールエクスカベーター>のように短時間で大量に掘削するわけじゃない。


そういえば、<バケットホイールエクスカベーター>で思い出したが、資源惑星で稼働中のそれだと、大型のものは全長一キロを超えるものすらあるらしい。


ちなみに<バケットホイールエクスカベーター>も今ではロボットの一種である。つまり、人型ではないが、全長一キロを超える超大型ロボットが地球人の社会を支えるために今日も黙々と働いているわけだ。しかも稼働年数自体、二千年を超えるものもあるとか。そう、コーネリアス号が現役だった頃から稼働し続けているロボットもいるんだよ。


<バケットホイールエクスカベーター>の原型となる大型の掘削機械は二十世紀初頭に建造されたそうで、二十一世紀には機能としてはほぼ完成し、それ以降、ロボット化したりものによっては宇宙船としての機能も持たされたりしつつ基本的な構造は大きく変わらず、六十世紀に至るまで運用されているわけだな。


だから、自動車や飛行機と同じく、大まかな構造や機能が変わらずに使われ続けている最古の機械の一つでもある。加えて<最大の機械>でもあるから、これまた<ロマンの塊>として少年の心をくすぐる存在だったりもするんだ。俺も好きだった。かつては、宇宙船としての機能を持たされた<バケットホイールエクスカベーター>を戦闘艦に改造して異星人と戦うというSF映画がシリーズ化されたこともあったりする。


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