ホビットMk-Ⅰ編 試掘用のロボット

なお、地球で地層処分されていた高レベル放射性廃棄物の方も、アミダ・リアクターが発明されるとその燃料に転用されてすぐになくなったそうだ。


作った時には十万年ほど保管するはずだったらしいのにな。ちなみに低レベル放射性廃棄物は燃料にはならないのでそのままだとも。


で、今じゃ、アミダ・リアクターの燃料を生産する目的も兼ねて、<宙間原子力発電所>が宇宙で稼働中だったりもする。こっちはそれこそ、地上と違って放射線の心配をする必要もないから、<工業衛星(要するに宇宙に浮かぶクソでかい工場)>の電源として気軽に使われていたりもするという。


ソーラーパネルも発明された当初とは比べ物にならない効率を発揮してるし宇宙空間ならそれこそ昼も夜も関係ないから常に発電できるが、放射線パネルと同じくやたら規模が大きくなることで<デブリ>対策もその分大掛かりになるがゆえに、案外、コストが高くつくそうだ。その点、原子力発電所はコンパクトにできる割に高効率という意味では実は有能らしい。


しかも、アミダ・リアクターが普及したことで、その燃料となる半減期の長い放射性物質の需要が高まり、原子力発電所の増設が検討されていたという話も、俺がまだ惑星プラネットハンターをしていた時にちらっと聞いた覚えがある。まあ実際はあくまで検討段階だったらしいが。


たぶん、以前にも触れたと思うが、放射線障害ですら治療が可能になったことで放射線に対する意識も昔と変わってそれほど気にならなくなってるそうだ。


確かに俺も、原子力発電所が多く建造された頃にはそれに対する嫌悪感も強かったらしいという話を聞いても、正直、ピンとこないしな。


その辺も、時代が変わり技術の進歩によって制御が容易になると感覚も変わってくるんだろう。それも人間という種の特徴だということか。


なんてことも考えつつ見守ってると、すべての部品が揃ったことで試掘用のロボットの組み立ての準備が始まった。それを組み立てるための<やぐら>がまず組み上げられ、そこからいよいよロボットの組み立てに移るわけだ。


試掘用のロボットは、<ロボット>とは言っても外見上はまったくそうは見えない、<変な形の建物>って感じだな。


とは言え、一応、自力での移動も可能なんだ。亀よりものろいそうだが。


六本の脚でゆっくりと動くらしい。それがみるみる組み上げられていく。働いているのがすべてドーベルマンMPMだから、休憩も必要ないし、並列で作業もできるしな。


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