新編 不幸自慢
新暦〇〇三四年四月十日
そんな
で、データを見たシモーヌが、
「たぶん、妊娠ね。ただし、これはあくまでデータ上、その兆候が見られるというだけの話。さすがにエコーでも現状ではたぶん見えないから、それが確認できてやっと確定だから。今の時点で喜んでもぬか喜びになるかもだから、浮かれないこと」
と告げるが、
「うん、うん」
「分かってる。分かってるよ」
ビアンカと
「私も、研究者としては大変に興味深いというのは正直なところかな。アラニーズとしての生殖機能も有した上で、人間の体を再現しただけの部分が妊娠するというのは、驚きよね。
ただ、妊娠という現象自体を人間(地球人)は神秘的なもののように捉えすぎだけど、クローンを育てるための<人工子宮>はすでに技術として完成したものになってるからね。科学的にはそのメカニズム自体は判明してるから、つまるところ、必要な条件さえ整えてあげれば当然それが再現されるのも分かりきってることなのも事実。『<再現性>こそが科学』だと、先人達も言ってきてるしさ。
要するに、その機能さえあるなら、人間(地球人)を再現した方の体で妊娠したって何の不思議もない。ってこと」
どこか嬉しそうにそう言った。
もっとも、
地球人はよく、
『自分の方がより不幸だ!』
などと、<不幸自慢>という形でさえマウントを取ろうとしたりするが、それ自体、
『不幸であるからこそそうせずにいられない』
というものなんだろうな。だからこそ、俺は、自分の家族や仲間達にただ不幸なだけでいてほしくないんだ。
不幸自慢をせずにいられないような境地でいてほしくないんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます