新編 改良点を洗い出すのが目的

シモーヌもビアンカも久利生くりうも、必要とあらばコーネリアス号そのものを跡形もなく解体してしまっても構わないと考えてる。感情とは別に、そういう割り切った考え方もできるんだ。それができる人材だからこそ、選出された。もし、解体してしまった後から新たに乗員達が現れても、それについてはその時に改めて考えればいいと覚悟もしてる。


一方、俺は、惑星プラネットハンターなんて仕事をしてた経験はあっても、特別な才能を持つわけでもないただの凡人だ。だからあれこれ考えてしまって及び腰にもなる。シモーヌもビアンカも久利生くりうも、そんな俺に合わせてくれてるだけだ。


とは言え、コーネリアス号に使われている部材の原料となる物質がここでは手に入らない上に、もし手に入ったとしてもそれを加工できる設備が用意できないという現実はいかんともしがたく、いずれは、


『惑星<朋群ほうむ>で手に入る素材だけで何とかする』


必要が出てくることも分かってくれている。だから<ホビットMk-Ⅰ>のようなロボットの開発にも賛同してくれてる。


が、当の<ホビットMk-Ⅰ>の方は、早速、コーネリアス号内でドーベルマンMPMと一緒に船内のメンテナンス作業に当たらせたんだが、非常にスムーズに動けるドーベルマンMPMにはまったく追いつけず、しかも、四本足で体を支えているにも関わらず、まるで歩き始めたばかりの頃の乳幼児のように何度も転んだ。


というのも、機体各部を制御している簡易AIそのものが、今のホビットMk-Ⅰのパーツそのものの特性が理解できておらず、制御が上手くできてないんだ。だから動きがぎくしゃくするし、連動ができずに転んでしまう。


これは、今ではアリゼとして運用されてる<アリスの試作機>にもみられたことだが、正直、それ以上に重症でもある。


<アリスの試作機>の場合には、経験を積んで学習することで補正していけたが、それが本当にできるのかどうかも怪しいレベルだ。根本的にAIが自ら補正していける範囲を超えている可能性がある。そもそも、こんな、二十世紀や二十一世紀に登場した<最初期のロボット>とほぼ変わらないものを制御するということがまず想定されていない。


それでも、本当に<子供の玩具おもちゃ>のような、機能を非常に絞ったものであれば、ぎこちない動きであっても構わないだろうから問題ないにしても、ホビットMk-Ⅰの場合は、せめて生身の人間一人分程度の働きはできてくれないと困るわけで。<生身の人間一人分の働き>に相当する緻密な動きをさせるには、現状の機体バランスだと相当厳しいらしい。


まあ、それを確認し改良点を洗い出すのが目的だから、これでいいと言われればいいんだけどな。


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