新編 話し合い

こうして話し合った結果、私室と公園については、取り敢えず残すこととなった。コーネリアス号の外装部分も、船体そのものを万が一の際のシェルターとして活用するためにもちろん残す。姿勢制御用のスラスターや補助推進用のロケットを外したところで、当然、それらの区画は気密区画とは隔壁で隔てられてるし船内に入れるわけじゃないしな。ちなみにそれらについてはまだ手を付けてない。内部の施設をすべて使い切ったらってことになってる。


それに、内部の施設を構成してる部材と違って、さすがに特殊な部材も使われてる上に、燃料などが一部残ってるから、それらを安全に処理してからでないと迂闊に触れない部分もあるしな。とは言っても、いきなり爆発したりはしない。というのも、今のロケット用燃料は、何とかという金属と結合させて粘土状になってるそうなんだ。で、それを随時触媒を通して還元、燃焼室へと送り込まれる形になってる。それまでは、たとえ火の中に放り込んでも爆発はしないとのこと。


ただし逆を言うと、うっかり触媒と触れさせると液化して大変なエネルギーを有した燃料になるから、その部分の扱いは慎重にしないといけない。と言っても、触媒を通して還元する装置は、不時着した時点でコーネリアス号自身がセーフティを働かせて物理的に切り離してあるから大丈夫なんだけどな。


なんて、<フラグ>に聞こえるかもしれないが、大丈夫、それはない。


単に、燃料そのものを利用しようとした際に苦労する羽目になったというだけだ。それについては後々の話なので置くとして、とにかく現状では、今の方針で行くということが改めて決まり、その上で、もし新たに<コーネリアス号の乗員>が現れた際に丁寧に対処することが確認された。


可能な限り<保護>して、今のシモーヌやビアンカや久利生くりうがそうだったように、自身の状況を受け入れてこの世界で前を向いて生きていけるように最大限のフォローを行うということだな。


とんでもない境遇に突然放り出された人間をろくにフォローもせずに、


『こっちの決めたことに従え!』


などと押し付けたところで相手も受け入れられるはずがないじゃないか。その当たり前のことを心掛けるようにしてるだけだ。


それは翻って、うららにも当てはまる。


もっとも、シモーヌもビアンカも久利生くりうも、惑星探査チームに選抜されるような人材だからというのもあって、俺よりもはるかに合理的なものの考え方や割り切り方ができてるが。私室についても、本当はもっと割り切ってるんだ。


むしろ俺が一番、遠慮してるだけだと思う。


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