新編 愚にも付かない与太話

『密林の木々の上に、日差しを遮らない透明な二百メートル級の小型滑走路を造る』


そんな俺のアイデアに、エレクシアは、


「本当にバカですね。マスターは」


辛辣な一言を返してくれた。が、


「ただ、マスターがそういう方だというのは私も分かっていますので、実現のためには協力いたします。理論上は確かに不可能ではありません。およそ効率的でなく、運用コストなどを想定すれば実用性は皆無に等しいというだけです」


などと言いながらも、設計を行ってくれた。そしてそれを基に、コーネリアス号で、


<代用プラスティックの透明なパネル>


の製造に入ってもらった。とは言え、専用の設備がないので、二百メートル分を作るには半年ほどかかる上、コスト的にも見合うものにならないそうだ。あくまで、


『素人の与太話を実現してみた』


的なものにしかならないことはあらかじめ承知しておかなきゃならない。


が、この手の、


<愚にも付かない与太話>


については、以前にも触れた、


<巨大人型ロボット>


が、イベント用の客寄せパンダとして建造されたりすることがあるのと同じだと考えればいいんじゃないかな。実際に作ってみて、実用性を実際に検討してみるという意味では、役にも立つわけだし。


で、<巨大人型ロボット>については、毎回、


『ロマン以外に意味がない』


という結論が出るそうだ。


散々言われている、


『でかいだけでただの的』


『人間的な動きをさせる意味がない』


『無駄に構造が複雑になりメンテナンス性が劣悪』


『重力下では、棒立ちさせているだけで風などにあおられてそれに抵抗するために踏ん張ることにより勝手にダメージを受ける』


等々の問題点が山盛り出てきて、


『兵器としての実用性は、ない』


って結論に至るという。


それでも、<ロマンの塊>という事実はやっぱり消えなくて、かつ、客寄せパンダとしては非常に優秀で、二十世紀終盤頃から二十一世紀にかけてのコンテンツのリバイバルブームなどがある度に、人気の巨大ロボット等を再現すればそれを目当てに多くの人が集まるということは必ずと言っていいほどに起こるので、そういう意味なら役にも立つんだ。


まあ、俺の考えてる<透明な滑走路>がどれだけ役に立つかはやってみないと分からないが、別に誰かが困るわけでもなし、試してみるだけ試してみるさ。


しかも、人間が操縦して離着陸する場合には<透明>というのはいろいろ問題もあるだろうが、ワイバーンシリーズはそれ自体がロボットだからな。人間のように<目>だけに頼ってるわけじゃないから、関係ないんだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る