新編 荒業

新暦〇〇三四年二月十三日




ビアンカの家だったものの改修が進む中、ひかりの妊娠も、シモーヌの診断により確定していた。もし妊娠が気のせいだったとしても、どのみちまどかひなたが大きくなってきたことで改修して利用することになっていたけどな。


しかも、ビアンカがいた時には結局、シャワーだけだったものに、コーネリアス号の工作室で作ってもらった浴槽を、<ワイバーンⅢ型>で届けてもらい、設置した。


ちなみに、滑走路がないここにどうやって届けてもらったかと言うと、上空を通過すると同時に投下。それをエレクシアがキャッチするという荒業で行った。


本当は、メイフェアかイレーネにローバーで取りに行ってもらうつもりだったんだが、物資の緊急輸送などの必要性が生じた時のことを想定し、空中投下式の訓練を兼ねて試したんだ。浴槽だけなら重量は三十キロにも満たないから、エレクシアなら何の問題もないのが分かってるから試せたことだが。


なお、今では、シモーヌはコーネリアス号への<里帰り>は、一年に一~二度程度の頻度で、メイフェアとイレーネがメンテナンスを受けに行くのも、ワイバーンⅡ型もしくはワイバーンⅢ型を使って行き来するようになった。おかげで、往復で十二時間ほどかかっていたそれが、六時間ほどで済むようにもなった。これにはメイフェアも、


ほまれ様と離れている時間が少なく済みます♡」


と大喜びだ。ただし、離着陸は、あかりがやっていた<曲芸>ばりの無茶なそれと同じ方式だから、あかり以外ではメイトギアのエレクシアとメイフェアとイレーネにしかできないが。


シモーヌが里帰りする際には、これまで通りにローバーを使って、メイフェアかイレーネを伴っての移動になる。


まあ、滑走路でも作ればいいんだろうが、あんまり密林を開墾し過ぎるのも、今の時点ではどうかと思うし。


ただ、それについても一つアイデアがあって、今度、アカトキツユ村で試してみようかと思ってる。密林の上に、


<日差しを遮らない透明な滑走路>


を作ってみたらどうかと思ってるんだ。


正直、無茶苦茶な素人考えなのは分かってるが、ワイバーンシリーズの滑走距離なら、精々二百メートル程度のそれがあれば十分だから、実現不可能なものでもないと思うんだ。


強度も、立体駐車場程度ので十分だし。


もちろん、集落の規模が大きくなればそれでは足りなくなる可能性もあるものの、大規模な<街>については密林を切り開くのではなく、元々開けた土地がある<荒野>に作ることになるだろう。これは、元から生物が存在する惑星を開発する時の手法でもある。先住生物への負荷を軽減しつつ移住を行うためのな。


かつての都市づくりは水利なども考えないといけないことで水源近くに作ることが多かったそうだが、今は、水を引くための工事も簡単なこともあって、水源や生物を守るために敢えてそうするんだそうだ。


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