新編 アドバンテージ

そんなこんなで、まどかひなたうららは、全力で遊んでる。


俺がデータの整理をしててもお構いなしで頭の上をポーンと飛び越えていったりもする。多くの親はそれを怒鳴りつけたりするかもしれないが、俺は敢えてそれをしない。もし言うとしても、


『なにやっとんじゃーい!』


と、ただの<ツッコミ>として行う。そうすることで、


『本当は勘弁してほしいことなんだ』


と伝えるわけだ。未来みらい素戔嗚すさのおの<力比べ>と同じだよ。正直、相手するのは大変だしいずれは収まってほしいことではあるものの、有り余るエネルギーの発散と、体の使い方や力の使い方を学んでもらうためには、なんだかんだで必要なことだから、敢えて好きにやらせるんだ。


お行儀いいだけのロボットのような人間にしたいわけじゃないからな。


それに、こういうのは、幼いうちに思いっきりやっておいてもらった方がいいんだよ。十代くらいになって<反抗期>と共に自分の中に湧き上がってくるリビドーやらなんやらをぶちまけようとされたら、それだけ影響も大きくなるだろ? その点、幼いうちなら力も弱いしできることも知れてるしで、フォローもしやすいからな。


あと、家の中で発散してもらう代わりに家の外では抑えてもらうという形にもできる。


なにより、赤の他人に向けて発散するのはダメだ。俺達は、子供達を受け入れた者として、勝手にこの世に送り出した者として、そういうのを受け止めなきゃいけないが、赤の他人は、まったく関係ないしな。


実際、まどかひなたうららも、家、と言うかこの集落の中で全力で発散することで、無駄に外に行こうとせずに済んでいる。口やかましく言わなくても、じゅんと一緒に出かける程度で満足してくれてるんだ。


これまでにも何度も言ってきたように、家をどれだけ壊されたって構わない。俺やシモーヌにどれだけ迷惑をかけたって構わない。俺達の目の届くところで、自分の中に湧き上がってくるエネルギーを発散してくれればそれでいい。


だから、純粋なパパニアンであるまどかはもちろん、ひかりじゅんの実子であり、パパニアンとしての血は四分の三でしかないひなただって、母親であるひかりをも上回る身体能力を得る可能性が高いだろう。まあ、これについては、ひかり自身がおとなしい性格で、ここまで全力で動き回ったりしなかったからというのもあるかもだが。


いずれにしても、今のこの世界では、高い身体能力を持っていることは少なからずアドバンテージになる。なら、余所に迷惑を掛けるわけじゃない以上は、目一杯遊んでくれればいいさ。


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