加えて、こうして和（まどか）と陽（ひなた）と麗（うらら）が三人で遊んでくれていることで、三人の関係はとても良好なものになってた。特に、陽（ひなた）は最近、麗（うらら）を気遣ったりする様子も見せる。

「おいでよ！　麗（うらら）！！」

そう言って彼女に手を差し伸べたりと、麗（うらら）より年下のクセに、彼女をリードするような姿も見せ始めてるんだ。

そんな陽（ひなた）のことは、麗（うらら）もすごく親しくしてくれている。彼の髪の毛の毛繕いをしたりすることもあるくらいには。麗（うらら）がそれをするのは、新（あらた）以外には陽（ひなた）と和（まどか）だけだ。

それでも、麗（うらら）にとって＜本命＞なのは新（あらた）なのだろう。頭髪しかない和（まどか）と陽（ひなた）の毛繕いはすぐに終わるので、そこからはもう新（あらた）にべったりである。

しかも、すごく丁寧に毛繕いをする。それはもはや、＜愛撫＞と言ってもいいくらいに、丁寧で濃密なんだ。彼女なりに何とか新（あらた）をその気にさせようとしているんだろうな。

見た目こそミドルティーンくらいな麗（うらら）だが、初潮も迎え、子を生むにはまだ少し早いとはいえ、別にそういう事例がないわけでもないから、番（つがい）になろうと思えばなれなくもないんだよな。

なのに新（あらた）は、一向にそういう気配を見せない。彼にとって麗（うらら）は本当に＜娘＞という認識のようだ。

まったく。これは切ないすれ違いだな。

俺が密（ひそか）達を最初は受け入れなかったのは、彼女達に対してそういう気分にならなかったんじゃなく、異種族でそういう関係になることに対する心理的なブレーキが俺の側にあっただけだ。けれど、麗（うらら）と新（あらた）は、年齢差こそあれ見た目も完全にパパニアン同士。拒む理由は別にないはずなんだがなあ。

にも拘らず、新（あらた）は、娘同然の麗（うらら）からの猛アタックに、困惑している様子も窺える。

逃げたり彼女を追い払ったりはしないものの、

『どうしたものか……』

みたいに考えているような雰囲気が俺にさえ感じ取れてしまう。

いやはや、受け入れてしまえば楽にもなれそうなんだが、新（あらた）の心の中にはまた凛（りん）がいるんだろう。

その凛（りん）は、侑（ゆう）と上手くいっていて、幸せそうだ。

『新（あらた）……お前も不器用なヤツだな……』

この頃、誉（ほまれ）の群れでも動きがあった。ずっと誉（ほまれ）が陣取っていた＜ボスの木＞に、轟（とどろき）が座っていたんだ。

ただし、『ボスの座を誉（ほまれ）が譲った』というわけではなく、この時点ではまだ、誉（ほまれ）がボスであることに変わりはない。ないんだが、轟（とどろき）が群れを仕切っているような様子も見え始めている。いよいよ、『その時』が近付いているということなんだろう。

穏当にボスの座を委譲するために、轟（とどろき）にボスとしての在り方を学ばせようとしてるんだろうな。

実の父親である俺よりもずっと、年輪を感じさせる振る舞いだよ。

だがその分、誉（ほまれ）に残された時間もそんなに長くはないのかもしれない。

それでいて、命（みこと）の間に新しい子、＜祈理（いのり）＞が生まれたりもしたけどな。

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