ビアンカ編 攻防

素戔嗚すさのおは、待ち受けるビアンカに、ためらうことなく向かっていった。ビアンカにも、ためらいはない。人間の体の方の足を狙って噛み付こうとしたと見せてアラニーズとしての脚を狙うという素戔嗚すさのおのフェイントにも冷静に対応。スッと脚を引いて体を移動させる。すると攻撃が空振りした素戔嗚すさのおも、瞬時に反応して、ビアンカが身を躱した方へと横っ飛びした。だがビアンカはそれも予測していて、横っ飛びしてきた素戔嗚すさのおをカウンターの形で蹴り飛ばす。


まるで自動車にでも撥ねられたかのように素戔嗚すさのおの体が吹っ飛び、地面を転がるが、その程度ではもちろん、彼も怯まない。すぐさま体勢を立て直して再度突撃。ビアンカはアラニーズの本体を屈ませて人間の体(アラニーズとしての頭部)を地面に着地させ、掴みかかってきた素戔嗚すさのおの手を払い除ける。すると素戔嗚すさのおもすかさず反対側の手を伸ばしてきて、ビアンカに掴みかかろうとする。彼女の体を掴むことで攻撃を封じようと考えてるのかもしれない。


加えて、レオンの<爪>は、それ自体が恐ろしい武器だ。いくつかのネコ科の動物に見られるように爪をひっこめることはできず、先も完全には尖ってないものの、レオンの力をもってすればたやすく肉を切り裂き突き刺さり、捕らえた獲物を離さない。


ビアンカもそれに備えて、防弾防刃服とプロテクターを身に付けてるわけだ。四十五口径程度の拳銃弾や普通のナイフくらいなら通さない優れモノだぞ。ちなみに、技術的にはライフル弾さえ通さないようにもできるそうだ。とは言え、衝撃までは完全には吸収してくれないので、ライフル弾の直撃など受ければただでは済まないということから敢えてそこまでにはしてないのだと言う。そして、素戔嗚すさのおの攻撃についても、下手な受け方をすればたぶん骨だって折れる。


もっとも、それを使い慣れているビアンカは、当然、承知の上だ。素戔嗚すさのおの攻撃を真っ向から受け止めるんじゃなく、受け流して衝撃を吸収する形で対処してる。


久利生くりうの体術に比べればまだまだその域に達していなくても、普通に人間(地球人)の暴漢程度を相手するには十分以上のそれだし、素戔嗚すさのおに対しても通用している。


こうして掴みかかろうとする素戔嗚すさのおとそれを払い除けるビアンカの攻防がしばらく続き、逆にビアンカが、素戔嗚すさのおの両手を掴んで見せた。


が、それは実は素戔嗚すさのおの狙いの一つだったようだ。自分の腕を掴んだ彼女の手に、「ガアッ!!」と喰らい付こうとする。指を咬まれれば、ちぎれはしなくても骨折は免れないだろう。


とは言え、ビアンカの方が上手だった。彼の腕を掴んだ手を滑らせるようにして顎の下へ潜り込ませ、そこから裏拳を跳ね上げて、素戔嗚すさのおの顎を打ち上げたのだった。


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