ビアンカ編 土竜とイタチ竜

夕方。そろそろ素戔嗚すさのおが活動を開始する時間だ。


ドーベルマンMPMにもサーモカメラは搭載してるので、草むらに潜んでる程度ではまったく隠れられないが、もちろんこちらとしては見守っているだけである。


そして、素戔嗚すさのおが体を起こして、まず餌を探し始めた。この辺りには、ネズミに似た小動物が多く住んでいて、餌には困らない。さすがに成体のレオンには物足りなくても、今の素戔嗚すさのおには十分な餌になる。


この辺りに住む<ネズミに似た小動物>は、地下に穴を掘って巣にしていた。これがいずれ<モグラ>や<ハダカデバネズミ>のような生態を獲得していくのかもしれない。ちなみに、土中に住むミミズに似た生き物や昆虫、植物の根や地下茎を中心にした雑食性の動物だ。


だから実は、ビクキアテグ村内にも巣があって、畑が荒らされたりもしているけどな。しかし、現時点では駆除などは行っていない。畑を作っているのは農耕の技術の継承が目的であって、食料については十分に確保できてるし。


ちなみに、地下に進出し始めているその小動物の近似種で、二回りほど体の大きいのもこの辺りには生息してて、それが一番の天敵だったりする。そちらは完全に肉食獣としての生態を獲得していった感じか。


基本的には自分達より大きな動物には積極的に襲い掛からないものの、興奮するとその限りじゃないことから、こちらは、ビアンカ達が起きている間はなるべく村に入れないようにドーベルマンMPMらが監視してくれている。と同時に、夜は敢えて好きにさせて、地下に大きな巣をつくる方を餌にしてもらったり。


で、地下に大きな巣を作る方は<土竜モグラ>、土竜モグラの天敵である方を<イタチ竜イタチ>と仮称してるんだ。


もっとも、素戔嗚すさのおにしてみればどちらも同じく丁度いい餌だな。


地下だけでは十分な餌を得られないことで地上に出てきて昆虫や植物を漁る土竜モグラを捕らえたかと思うと、その土竜モグラを狙って近付いてきたイタチ竜イタチも捕らえて両方ともバリバリと食ってしまった。


いやはや、逞しい。


こうして腹ごしらえを済ませ、ベロリと口の周りの血を舐め取った素戔嗚すさのおは、いよいよビクキアテグ村に向かって移動を始めた。


そこに立ちはだかる、ドーベルマンMPMを従えたビアンカの姿。


アラニーズとしての本体を別にすると、ヘルメットとゴーグルを着け、全身をプロテクターで覆った女性が、腕を組んで足を組んで空中に浮かんでいるようにも見える。


なかなかにシュールな光景だ。


とは言え、ビアンカ自身は大真面目。油断なく素戔嗚すさのおを待ち受けているんだけどな。


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