ビアンカ編 気性の荒い子供

ところで、現在、ビクキアテグ村は、三つの<群れ>の縄張りに囲まれている。


一つは、牙斬がざん戦の際に巻き添えにしてしまったオオカミ竜オオカミの群れ。もう一つは、そうかいの群れ。


そしてさらにもう一つは、かいせんの息子であり俺にとっては初孫にあたるえんがいる群れだ。実は以前はもっと離れたところに縄張りを持っていたんだが、離合集散を繰り返すうちに、えんが所属するグループは今の場所に落ち着いたと。


その群れとは、早々に非干渉状態に持って行けたから、基本的には穏当に<お隣さん>を続けられている。当然、そちらにもドーベルマンMPMが管理する<畑>は作ってあり、それを餌場とするインパラ竜インパラ猪竜シシをはじめとした多くの動物達がいることで獲物には困ってないから、無理にビクキアテグ村を襲撃する必要がないんだ。


加えて、今ではえんがボスに準じた地位にいることも影響してるだろう。


ただ、その群れで生まれた<ボスの子>の一人が、どうも少々気性が荒いみたいでな。まだ幼いクセに、しょっちゅう、仲間と派手に衝突してはぶちのめされるってことを繰り返してたんだ。えんも、そいつに喧嘩を吹っ掛けられたことは何度もある。


えん自身は、レオンとしてはややおとなしい部類に入る性格をしてるから基本的にはムキになって相手はしないんだが、あまりしつこいと反撃することもある。


で、くだんの暴れん坊のレオンを、俺は、<素戔嗚すさのお>と呼んでいた。名付けずにおくにはいささか印象が強すぎたからだ。


パパニアンのほまれの群れにいるとどろきすばるも、大概、猛々しい性分のやつだとは思うものの、素戔嗚すさのおは二人に勝るとも劣らない激しい気性の持ち主だという印象がある。


その素戔嗚すさのおは、年齢はたぶん三歳になったばかりくらい。体が大きいから見た目には人間(地球人)の十歳くらいにも見えるものの、それでもまだまだ子供なわけで、当然、成体おとな相手に勝てるわけがない。


ただ、この素戔嗚すさのお、自分と同じ子供相手には、直接的に攻撃することはあまりないようだ。明らかに自分より強そうな相手に勝負を挑んでいく傾向がある。そういう意味でも、とどろきすばるに似てると言えるか。


こういう気性の個体も、どの種にも生まれる可能性があるらしい。人間(地球人)にも、いわゆる『気性の荒い子供』というのは時折生まれる。とは言え、そういう子供の場合にはそれこそメイトギアをつきっきりにさせて、その攻撃性をメイトギアが受け止めることで発散させた上で、自身の荒い気性との付き合い方を学ばせていくそうだ。それにより、スポーツ選手や格闘家の道に進むのが多いとか。


<生まれつきの性格>というのも確かにあるんだが、それさえ、人間(地球人)の場合は後天的に自身の気性と折り合っていく方法を学ぶことでリスクを軽減することができるんだが、野生の場合はな。大成する場合もある半面、無謀なことをして途中で命を落とすことも多いようだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る