モニカとハートマン編 白いルプシアン

新暦〇〇三三年十一月七日




ルコアがビクキアテグ村に移住するのに伴って一緒に来たハートマンは、元からいたグレイと共に、村の整備を行う。


もちろん、本来の役目である<警備>も同時にしている。ドーベルマンMPMと連携してな。


「ご苦労さん」


あかりがそう声を掛けると。


「ありがとうございます」


と応えた。


エレクシアがよく言う、


『いえ、これが私の役目ですから』


的な素っ気ないものじゃなくなっていた。エレクシアよりはむしろ人間味があるよ。


と、その時、ビクキアテグ村から十キロほど離れたところを巡回していた母艦ドローンが、映像を送ってきた。


俺と久利生くりうが、それぞれ、タブレットで確認すると、


「ルプシアン……?」


俺は思わず呟いていた。そう。捉えられた映像の中に、白い人影が見えたんだが、最初、レオンかも思ったものの毛並みからするとルプシアンのようにも見えたんだ。


今、アリニドラニ村で鍛冶の真似事をしている斗真とうまと同じルプシアンである。


が、その<ルプシアンらしき個体>は、白く見えるので、普通のルプシアンではない。何より、この辺りにルプシアンはいないはずだった。草原よりは荒れ地の辺りを主な生息地にしてるはずなんだ。そして、白く見えるというのは、


「例の不定形生物が変化したものか……」


今度は久利生くりうが呟いた。


おそらくその通りだった。透明な体毛が光を乱反射し白く見えるのは、分かっている。この個体の白さは、アルビノなどではなく透明だからこその白さという印象があるんだ。


「まあ、ルプシアンならそんなに警戒する必要もないかもしれないが、念のため、しばらく追跡しようか」


「そうだね。用心に越したことはない」


一応、夷嶽いがくの方も確認したが、相変わらず、ドーベルマンMPMと<鬼ごっこ>をしながら普通に生き延びていた。倒してしまったりはしてない。


だからたぶん大丈夫だと思う。


あかりきたるも、危険な気配を察知していないようだし。


とは言え、さすがに十キロも離れてたらそれも当然かもしれないが。


いずれにせよ、油断はしないようにしたいものの、あんまり神経質になっても疲れてしまうからな。上空から母艦ドローンで監視しつつ様子を見よう。









新暦〇〇三三年十二月九日




で、実に平穏に、ルコアが移住してから一ヶ月が過ぎた。


コーネリアス号で治療カプセルに入れようとしたことで警戒させたのか、しばらくきたる未来みらいから目を離さないようにしていたものの、また、割と好きにさせるようにもなっていた。


おかげで、ルコアも未来みらいにある程度は近付くことができた。


さすがに抱いたりまではしないものの、傍にいることくらいなら大丈夫なようだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る