モニカとハートマン編 廉価版のドローン

<廉価版のドローン>


というのは、コーネリアス号の工作室で作ってもらった、機能を絞ったドローンだ。マイクさえ搭載してなかったが、当時はそれで十分だと思ったんだよな。しかし今では、なんだかんだと連絡用にも使うしで、元々コーネリアス号に装備されてたドローンに準じたものを作ってもらってる。


で、最近ではちょっと使い方が限定的になってしまった<廉価版のドローン>だが、運動性能についてはそれほど劣ってるわけでもないし、役に立つならそれでいいさ。


とは言え、あんまり無駄遣いされてもあれだし、一応、『十機まで』とさせてもらった。


「ありがとう。なるべく大事に使わせてもらうよ」


そう言った久利生くりうの狙いは、俺にも察せられた。<廉価版のドローン>をわざと接近させて、夷嶽いがくの攻撃能力を測定しようということだ。


ドローンといえど使い捨てにはしたくないが、道具を道具としてきっちり使うというのも大事なことだ。それによって敵の能力を把握し、リスクを下げる。そのために道具というものは存在する。


だから俺は、もう一機、<廉価版のドローン>を搭載している母艦ドローンを現場へと向かわせた。夷嶽いがくを発見した母艦ドローンにも五機が搭載されているから、合わせて十機が確保できる。


そして、早速、五機を射出。先行させた。


コントロールは、イレーネがコーネリアス号を中継して行う。


「イレーネ。久利生くりうの指示に従ってドローンを運用しろ」


俺の指示に従い、


「よし、まずは一番二番、背後から秒速三メートルで接近」


久利生くりうの指示通りに接近させる。


と、二百メートルほどにまで近付いたところで、夷嶽いがくが振り返った。<廉価版ドローン>の接近に気付いたということか?


がくは、数キロ先で使われている電磁加速質量砲レールガンが出す電磁波を察知していた。それに比べればずっと弱いそれではあるものの、<廉価版ドローン>が出す電磁波を察知したのかもしれない。


が、明らかに警戒した様子で睨み、体自体をそちらに向けるものの、あの<銃らしきもの>は撃ってこない。


射程が足りないのか、それとも精度が低いからもっと引き寄せてからということか……?


と、夷嶽いがくまであと百メートルというところまで接近した時、<廉価版ドローン>の一機からの信号が突然途絶えた。


「一番、ロスト」


イレーネとグレイが告げる。撃墜されたか。その直後に、


「二番、ロスト」


二機目の信号が途絶えたことを伝えてくる。


と同時に、タブレットにその直前の映像が。


「撃たれてるな……」


久利生くりうが呻る。


超スローで再生された映像を見て、俺にも、白い小さな物体がカメラめがけて飛んでくるのが分かったのだった。


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