モニカとハートマン編 消耗

<狩猟用空気銃を超える威力をもつ攻撃手段>を有した夷嶽いがくについて、俺達は慎重に対応することをお互いに確認した。


この辺りは軍の仕官であった久利生くりうがいてくれるのが非常に心強い。


彼が、


がくのデータを基に行動予測。算出された地域を中心に母艦ドローンにて捜索。合わせて、ドーベルマンMPMも空から捜索。発見次第降下。夷嶽いがくの誘導を行う」


と告げてくれたので、


久利生くりうの提案を実行」


と、追認する形で指示を出すだけで済んだ。


同時に、


「完成した基幹ドローンの試作機も派遣し、ドーベルマンMPMに確実に給電できるようにしないとな」


とも付け足した。もっとも、久利生くりうとしては、母艦ドローンを中継器として給電するだけでも十分なのを分かっていて敢えてそこまで言わなかったんだけどな。俺が素人考えで蛇足を加えてしまっただけだ。


でも、久利生くりうも、


「今後に向けてのテストを兼ねるという意味でも無駄にはならないと思う」


とは言ってくれた。


彼の気遣いが沁みる。


ところでこの時、ルコアは、ビアンカやあかりと一緒に、新しく作った家の方で、彼女のための部屋の準備をしていた。


ビアンカとあかりについては、イヤホンで俺達の会話は聞いているものの二人にはルコアを優先してもらう。夷嶽いがくが現れた現場はビクキアテグ村からも五十キロ以上離れてる。今のところ、何も危険はない。この時点でルコアに報せて不安を与える必要もないだろうということで。


俺達の対応さえちゃんとできれば、なにも問題ないはずなんだ。


と、現場に急行した母艦ドローンが、<がくのデータを基にした行動予測半径>に入り、搭載していた<マイクロドローン>を放つ。ここからはしらみつぶし方式で探すだけだ。


すると、ものの五分もしないうちに、


夷嶽いがくと思しき生物を発見しました」


俺のところではイレーネが、久利生くりうの方ではグレイが、それぞれコーネリアス号のAIからの連絡を読み上げた。


タブレットにマイクロドローンが捉えた映像を映してもらうと、


がく……」


ついそう漏らしてしまったとおり、一見するとがくそのものな巨大生物の姿が。ちょうど、サイゾウの近似種である動物を喰らっているところだった。


タブレットには、夷嶽いがくの現在地も合わせて表示される。それは、<N008>の南西一キロの位置だった。


「思ったよりは移動していなかったな……」


俺は思わずホッとしていた。そして、


「よし、ドーベルマンMPMは北側五百メートルの位置に降下。そこから夷嶽いがくに接近しておびき寄せる」


と指示を出す。すると久利生くりうは、


夷嶽いがくの索敵能力と射程および精度を知りたい。ドローン数機の消耗を許可してもらえるだろうか?」


提案してきた。その意図を俺も察し、


「分かった。廉価版のドローンなら十機まで許可する」


告げたのだった。


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