麗編 思春期

ルコアのことは今後も注意深く見守るとして、まどかうららひなたも、見た目はすっかり大きくなった。


ただし、人間として育ってるまどかひなたについては、外見はそれぞれミドルティーンに差し掛かってたりローティーンくらいに見えたりしてるものの、実年齢はまだまだ六歳とか五歳とかだ。言動も幼い。遊び方も幼児のそれだし。


ほまれ達がいた頃に比べると単純に人数が少ない分だけ騒々しさもマシなだけで、身長百五十センチ弱、体重四十キロ弱くらいのが走り回り跳び回ってるって状態だから、家も壊れる壊れる。


エレクシアの仕事は、家の修繕でほとんど終わってしまう状態だな。周囲の哨戒はドーベルマンDK-aとイレーネだけでやってる感じだ。


とは言え、俺達の集落を取り囲むように縄張りを持つ、めいじょうしょうすい駿しゅん達のおかげで、エレクシアで対処しないといけないレベルの危険なのはほとんど近付いてこないから、それで十分に間に合ってたりもする。


駿しゅん達も、相変わらず元気だ。そろそろ老いてきたかな~と思ってたがさにあらず、ぼちぼち孫世代が子を生し始める中でも壮健で、今なお若い連中を寄せ付けない強さは維持されていて、実力派揃いの子供達も自分がボスになるのは諦めてどんどん巣立っていってる。


ただ、ごうについては、どうやら全盛期は過ぎたようにも見える。強さそのものはそれほど衰えた印象はないものの、以前ほどの迫力がないんだ。


元々、駿しゅんよりはそこそこ年上だったみたいだしな。当然のことかもしれない。


さりとて、この群れにおいてはごう駿しゅんの二頭が合わせてボスみたいなものだから、ごうが衰えても駿しゅんがそれを補うし、まだ当面、安泰だろう。


そもそも、ボクサー竜ボクサーの群れでは、十年、同じ個体がボスを務めれば長い方みたいだしな。それがもう二十年ほどだ。そこからさらに数年、君臨し続けるとなると、これは相当だぞ。




とまあ、周囲もそれなりに変化する中、うららあらたへの態度にも変化が見られた。外見的にもかなり成長したし、実年齢の面でも、パパニアンとしては<思春期>に差し掛かっていると言えるだろう。実際に雄とつがって子を生すにはもうしばらくかかるにしても、明らかにあらたのことを<雄>として意識しているのが窺える。


が、あらたの方はそれほど乗り気ではないらしい。うららのことは大事にしてるものの、りんとの時のようにイチャイチャはしない。むしろうららの方が積極的で、体を寄せていったりしている。


そんなうららのアプローチを嫌がるわけでもなく、優しく撫でてあげたりもしつつ、でも性的に興奮してる様子もない。


それは単純に、うららがまだそこまで成長していなくて、その種のフェロモンが十分に出ていないからという可能性もあるのか。


年齢差については、パパニアンとしてはそれこそ<親子>どころか<祖父と孫>くらい離れているが、野生の動物は、そもそも<年齢>という概念が明確じゃないらしいから、繁殖能力があって魅力的なら関係ないんだろう。


りんとの間には子ができなかった(いやまあ、母親は違うと言っても実の兄妹だからできてもらってもそれはそれであれではある)あらただが、うららのことは受け入れてくれるかな。


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