ルコア編 一案

『マスターが望むのでしたら、私は自身にできることをするまでです』


エレクシアの返答はいつもと変わらず冷淡なものだったが、それは逆に、


『差し迫った危険もなければ大きな懸念材料もない』


ことも表しているのは、彼女との付き合いが長い俺には分かってしまう。


「じゃあ、彼女については改めて<保護>の方向で」


俺の宣言に、


「そうね、それでいいと思う」


とシモーヌ。


「了解した」


と、タブレットを通じて参加していた久利生くりう


「異議な~し!」


と、久利生くりうと共に参加していたあかり


それから、


「また仲間が増えそうだ」


まどかひなたうららが遊んでいるのを見守っていたひかりにも声を掛けると、


「分かった。お父さんが決めたことならそれでいい」


彼女もそう言ってくれた。


すると、


「なになに? 誰か来るの?」


まどかがすっ飛んできてタブレットを覗き込んだ。


「ぼくも~! ぼくも~!」


ひなたまどかの頭にしがみつくようにして覗き込む。


そこには、グレイが捉えた<サーペンティアンの少女>の画像。


「ヘビだ!」」


「ヘビ~っ!」


見たままを口にするが、そこに悪意や蔑視はないのが分かる。


その上で俺は、


「そうだな。ヘビに見えるけど、実際は、コンテンツに出てくるヘビじゃないみたいだ。<ヘビに似た動物>だよ。そしてこの子は、<サーペンティアン>。この惑星ほしに生きる俺達の仲間だ」


と告げた。


敢えて、


『仲良くしてやってくれ』


とは言わない。そんなことを言わなくても、仲良くできると思えば仲良くしてくれるし、そうじゃなければ距離を取るだけだ。この子達はわきまえてくれてる。


見た目にも完全なパパニアンのうららは興味がないのか屋根に上って不思議そうにこっちを見てるだけだし、れいは今日もえいの部屋をただ覗き込んでるだけでこっちには来ない。実にそれぞれ好き勝手にやってる<群れ>だが、それがいい。お互いにお互いを認めているから、強引に従わせなくていいんだ。


とは言え、<サーペンティアンの少女>については、


「まずは、数日、コーネリアス号でいろいろ調べさせてもらって、その後は、まず、ビクキアテグ村で暮らしてもらうことになると思うが、いいかな?」


未来みらいを抱いた久利生くりうと、その脇に控えていたあかりに、タブレットを通じて問い掛ける。もちろん、強制じゃない。あくまで単なる<一案>としての提示だ。


が、


「ああ、危険がないのならこちらはいっこうに構わない」


「熱烈歓迎だよ、カモカモ~ン♡」


久利生くりうあかりは二つ返事で承諾してくれた。


俺としても、ビクキアテグ村に過剰な負担を負わせたいとは思ってない。正直、きたるがどう反応するかは気になるところだが、彼女はとても強いからな。明らかに<強さ>を感じさせない少女には大して警戒しないだろう。


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