ルコア編 お姫様
そうやって俺達が話し合っているうちに、ビアンカは<サーペンティアンの少女>を風呂に入れてくれていた。
後で聞いた話だが、少女は、透明な上にまるでヘビのような自分の体を見て泣きそうな表情になっていたそうだ。
無理もない。むしろ平然としていられる方がおかしい。
透明なだけで基本的な部分は人間と変わらなかったシモーヌでさえ今の自分を受け入れるのにそれなりの時間を要したし、軍人だったビアンカでさえ、
だとすれば、少女が今の自分を受け入れられるようになるには、おそらく、『赤ん坊として今の体に生まれて育ってきた』というのに匹敵する時間と手間が必要だと思う。
そう。少女が十二歳くらいだとするなら、それこそ十年以上の時間がな。
『そんなに手間を掛けてられるか!』
という意見もあるかもしれないが、俺はそれには耳は貸さない。あの少女を保護する決定をしたのは俺だから、俺には、
『生まれてきて良かった』
と思わせてやらなきゃいけない責任が生じたと思ってる。その覚悟もなく子供なんて育てられるか。
こんな、<人間社会>も<文明>もない世界で、
『何を今さら』
って話だよ。
<生まれてくる命>
は、誰一人として、どのような生き物であれ、自分では生まれてくることを選べないんだ。
何の準備もなく、何の覚悟もなく、何の心構えもなく、ある日突然、この世界に放り出されるんだぞ?
普通は<赤ん坊>としてだからその理不尽さに気付くこともできないかもしれないが、考えてみたらとんでもない話だ。
なのに、シモーヌやビアンカや
『オリジナルの記憶と人格を有したままで<人間じゃないもの>としてこの世界に放り出された』
んだ。これがどういうことか、正直、俺にも分からない。俺は遭難してここに来たが、遭難するような無茶をしたのは俺自身の決断だからな。これはまぎれもないただの<自業自得>だ。理不尽でもなんでもない。
だから、何度でも言うが、サーペンティアンの少女についても、
『今の自分として生まれてきて良かった』
と思わせてやらなきゃな。
俺の対応の一つ一つが、今後この
そうして俺は、
「初めまして。俺は
タブレット越しではあるものの、精一杯の穏やかな笑顔で、少女に挨拶したのだった。
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