晴編 まったく異なる考え方

これまでにも何度も言ってきたが、俺達が住んでいる<家>は、


『壊れたらその都度直す』


ことを前提にして、子供達が持つ能力を最大限に発揮してもらって構わないって俺は思ってる。


『家を壊させない』


よりも、子供達の能力を伸ばすことを俺は優先した。だから壊そうが汚そうが、それを理由には叱らないようには心掛けてる。あの子達は地球人とは違う。その事実をちゃんと受け止めていきたい。


とは言え、いつもお利口なままでいられないのも地球人を含む<人間>のさがと言うか業と言うか。


だからつい、


「おい!」


と声を荒げてしまったこともある。まどか達はその時のことをよく覚えていて、たまに俺が怒ることがあるのを分かってて、


「ごめんなさい」


と言ってくれた。


まあそれは、俺自身が、何か失敗をした時、声を荒げる必要のない時に感情に任せてそうしてしまった時に、


「ごめんな」


そう素直に謝るようにしてるから、その真似をしてくれてるというのもある。


親がちゃんと謝る姿勢を見せてなかったら、子供もそれを学べないだろう? 親は失敗をしても間違ったことをしても謝らないのに、子供にだけ謝らせようとするのは、無駄に反発を招くだけだという実感しかない。


そう言えば俺の子供達には、


<反抗期>


なるものがほとんどなかったと思う。


それは、


<反抗する必要>


がなかったからだろうな。


子供達の言うことにはまず耳を傾けて、聞ける話なら躊躇わず聞き入れるし、聞けない話なら聞けない理由を説明した上で<対案>を用意するようにしてたし。


だから子供達も、感情的になって反抗するよりもまず話してみるっていうのを実行してくれてたんだ。


親にそもそも話を聞く姿勢が見えなかったら、それは子供としても強い態度で臨むしかなくなるだろう?


普通に人間相手の<交渉術>とか<リスク管理>ってもんだよ。


自分とまったく異なる考え方をする相手とのコミュニケーションだ。


こっちは経験に基づいた打算的や合理的な思考をするが、相手はその<経験>が決定的に不足してる。ゆえにこちらとはまったく異なる考え方をしてくる。


そしてそれは、


<ほとんど誰しもが通る道>


俺自身、幼い頃は親を散々困らせたはずだ。自分は親を困らせてきたのに、自分が親の番になったらそれを許さないというのはやはりおかしいだろう。


俺はそれを心掛けてる。


だからこそ、せいのこともあるがまま受け入れなくちゃいけないと思ってる。


人間である俺にとっては理解できないことであってもな。


と、俺は自分に言い聞かせるわけだ。


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