保編 自己嫌悪
そうだ。こんな安い挑発に本来の
たぶん、
だからつい、カッとなってしまった。
その衝動をぶつけようとするかのように、
それでも、
オロオロする
「お兄ちゃんやめて! やめてお兄ちゃん!!」
という意味の声を掛け続ける中で。
十分以上、その調子で
そして精も根も尽き果てて、木の幹に寄りかかって座り込んでしまう。
すると、
「ふんっ!」
と鼻を鳴らしながら、その場を離れた。
それら一連の騒動を、
加えて、
疲れ果てた
きっと、今、彼はどうしようもない自己嫌悪の中にいるんだろう。人間で言えばせいぜい五歳とか六歳とかくらいの知能しかないパパニアンとはいえ、その中でも知能が高い部類になるだろう
俺も覚えがあるよ。小学校の低学年の頃、つまらない意地を張って父親に反発して、でも父親はそんな俺を叱りもしないでただ黙って俺の身勝手な憤りを受け止めてくれて……
一通り喚き散らしたら、そんな自分に動じることもない父親の大きさに比べて自分がいかに小さいか思い知らされてしまって……
父親に対して腹が立ったと言うより、自分の器の小ささが嫌で嫌で、部屋の隅で丸まって泣いたよ。
まだ七歳とかそこらの子供でも自己嫌悪に陥るんだっていうのを、俺は自分の経験から学んだな。
その時の俺自身の姿が、この時の
今の
それは決して、
そして
人間ならいささか問題にもなりそうなやり方でも、パパニアンならそれで良かったんだろう。
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