保編 資質の問題

『女に守られてるとか、情けない』


みたいな話について、現実問題として戦闘力が皆無の男が、自分より強い女性がいるのにその前に出て戦って、何とかなるか? それでカッコよく活躍できるとか、どんな<ご都合主義>だよ。


力があるのにコソコソしてるなら確かに格好悪いだろう。だが、明らかに弱いのが前に出たらそれこそ足手まといどころか仲間を危険に曝すことだってあるんじゃないのか?


俺だって、格好良く敵をやっつけたいっていう願望がないわけじゃないが、現実はそう甘くないんだよな。


でも、とどろきすばるには、戦う力がある。


そしてちゃんとその力を活かして前に出て戦ってる。


俺はそんな二人は立派だと思うよ。


だいたい、ライオンの群れなんかだと、狩りなどは雌の役目であって、雄は普段はただただぐうたらしてるだけじゃないか。それを、


『女に守られてるとか、情けない』


とか言うのか? そんなもの、ただの傲慢じゃないのか?


それ以前に、そんな大きな口を叩く奴自身が実際に女を守って戦えるのやら。


いや、そもそも、ここの<女>と言うか<雌>達は、ただただ雄に守られてるだけの存在じゃないからな。クロコディアやマンティアン、ボクサー竜ボクサーオオカミ竜オオカミヒト蜘蛛アラクネ辺りはそれこそ雄と雌とで言うほど力の差はないし、下手すると雌の方が強かったりするし。


なるほど人間の場合は、男女で身体能力に有意な差はあるのかもしれない。しかしそれは<人間という種>の中だけの話であって、人間以外の種や、フィクションの中の<人外>にまで当てはまるわけないじゃないか。それをわきまえてない人間の戯言だな。




が、パパニアンにおいても、肉体的な強さについては雄の方が優位というのは確かにある。だから雄が前面に出て戦う種族だ。


臆病に見えるじゅんでさえ、ひかりまどかひなたを守ろうとする。


でもまあ、実際には、強力な武器を自在に使いこなすひかりの方が、明らかに強い。しかも、パパニアンとして育ったことで知能の面でも不利なじゅんでは、それも含めた<総合的な戦闘力>ではやっぱりひかりには敵わない。


でも俺は、それを情けないとは思わない。単に<資質>の問題だからだ。何より、かつてひかりを守ろうとしてボクサー竜ボクサーに挑み重傷を負ったこともあるじゅんは立派な<おとこ>だよ。


ただ、その一方で、身の程をわきまえてなかったというのもまた事実。ひかりに任せておけば問題なかったところを無謀なことをしてひかりに心配を掛けたことについては、ややマイナス評価でもある。


けどなあ、それをきっかけにしてひかりじゅんとの関係を進めることができたっていうのも事実なんだ。


そういう意味でも、物事っていうのは一面だけじゃ判断できないと俺は思うね。


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