來編 新しい命
「
明らかにクロコディアの姿をしていない我が子の姿を見ながら、それでも
我が子の体に着いた粘液を舐め取っていく。
すると赤ん坊の方も手足をばたつかせながら「みいみい」と声を上げている。
すごく元気そうだ。
「どういうことだ……?」
思わず声を上げた俺に、シモーヌが、
「もしかしたら、私達と一緒に暮らしたことが影響してるのかも……
彼女は、
と。
言われてみれば、なるほどそうかもしれない。彼女にしてみれば俺達も<仲間>だった。その仲間と同じ姿をしているこの赤ん坊も、<我が子>だと認識できてもそんなに不思議はないんだろう。
「そうか…よかった……」
ビアンカは涙ぐんで口を覆ってるし、
シモーヌも涙を拭っていた。
たぶん、これまで育ててきた子供達といろいろ違う部分もあって戸惑うこともあるだろう。人間のように道徳や法律で縛られているわけじゃないから、自分の手に負えないとなればカッとなって手に掛けようとしてしまったりすることもあるかもしれない。
だが、そういう部分は俺達がフォローすればいい。
だから俺は言った。
「
この子は俺達みんなで育てよう」
その言葉に、
「もちろん! 最初からそのつもりだよ!」
「はい、私もそのつもりでした」
ビアンカが涙ながらに応え、
「僕はそれこそこの子の父親だからね。育てる義務がある」
特にビアンカにとってはいろいろと複雑な想いもあるだろうに、そういうこととは切り離して、
<自分が守るべき対象>
と考えてくれることには本当に頭が下がる。
普通に考えれば他の女性が産んだ<惚れた男の子供>なんて、憎悪の対象になってもおかしくないし、実際にそれで子供を傷付けようとした女性、だけじゃなく時には男性もいたりするそうだが、逮捕されたりということはあるそうだ。
それを思うと、ビアンカは立派だよ。
とは言えそれも、
実際、
それがゆえの精神的な余裕があるんだろう。
いずれにせよ、新しい命を迎えた
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