來編 集落完成

新暦〇〇三十二年五月三十日。




こうして何だかんだとありつつも新しい集落の建設は順調に進み、二週間後には、家三棟、倉庫一棟、直径十五メートルの池を擁した集落の基礎が完成した。


加えてドーベルマンMPM八機も揃い、早期警戒網も構築される。


家は、あかり、ビアンカ、久利生くりうが普段過ごすための<母屋>に加え、防音性能を高めた<プライベート空間>としての<離れ>、及び家族が増えた時用の三棟だ。


そしてここまでにも、久利生くりうはビアンカときたるの相手を交互にこなしてくれていた。


ただし、きたるの相手をした後はコーネリアス号に行って治療カプセルに入ってもらうので、正直なところここまでまともにそれ以外の仕事ができてない。


いや、<ハーレムのボス>としてはそれも大きな仕事の内なので、そういう意味では実に勤勉に働いてたんだけどな。


「で、本音としてはどうよ?」


さすがに俺としても気になったので尋ねてみたが、


「まあ、大変だけど大丈夫だよ。きたるもすごくいい子だし」


クロコディアとしてはもう<熟女>になるであろうきたるを相手に『いい子』というのもなんだが、それでも実年齢で言うと久利生くりうの方がはるかに長く生きてきた経験があるので、そういう意味では子供みたいなものか。


実際、きたるの方も久利生くりうのことがますます気に入ったらしく、基本的にべったりだ。


「……」


ビアンカはその様子に思うところもありつつも、順番を譲ってもらったというのもある上に、きたるのこの態度はどうせ子供ができるまでの間だからということで了承してもらってる。


ちなみにあかりはまだ久利生くりうとは触れあっていない。


彼女としては、きたるに子供ができて久利生くりうを求めなくなるまで待つつもりのようだ。


野生寄りでありながらも人間の感性も併せ持つあかりならではだろうな。


だが、俺としては彼女自身がそれを選ぶなら口出しするつもりもない。


彼女の人生だ。あかりが自分で決めていけばいいさ。




一方、きたるきたるでマイペースだ。


池で寛いでたかと思うと入り込んできた魚を捕らえてバリバリと貪り食い、それからおもむろに久利生くりうのところに行って彼を求めるという。


きたるにしてみれば早々に子供が欲しいところだろう。だからこうやって頻繁に求める。


久利生くりうもそれは分かってくれてるから、しっかりと役目を果たしてくれる。


当面はそれが彼の第一の仕事ってことになるな。


とは言え、まったくそればかりしてるわけでもない。空いた時間には集落の拡充を行ってる。周囲に柵を設け、集落としての体裁を整えていってもらってもいるし。


柵と言っても、<獣避け>のそれじゃない。正直、簡単な木の柵なんかじゃとても侵入は防げない。


まあ、心理的なものと言えるか。


『ここが人間の生活空間』


的な意味でな。


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