來編 余韻に浸って

で、ビアンカについてはようやく収まるところに収まったと考えていいとして、きたるだよ。


本来なら彼女のことに詳しく触れていくつもりだったんだが、ここまで完全に話が逸れてしまっていたな。


そんなわけで、ようやく、彼女の話に移るとしよう。


ビアンカがたっぷり久利生くりうに愛してもらった後で、散々、お預けを食ったきたるは、激しく彼を求めたそうだ。


ちなみに、少々下世話な話だが、ビアンカはきたるとは正反対にスローでマイルドでまったりとしたのが好きだそうで、実にゆったりとした時間を過ごしたんだと。


おかげで久利生くりうの方も体力を温存、と言うか、あんまり激しく連戦すると『擦り切れ』て痛いからな。それがなかったのは実に幸いだっただろう。


ただし、きたるには絞り尽くされたそうだが。


うん、分かるぞ、久利生くりう。お疲れ様。




一方、遂に本懐を遂げたことで、きたるは満足して久利生くりうの腕の中で眠ってしまったそうだ。


これは、普通はやらないことらしい。無防備に寝てしまうとか、命の危険すらあることだからな。


それだけ久利生くりうの傍は安心できたということだろう。


そうして昼過ぎに目を覚まして家から出てきたきたるは、まるで憑き物が落ちたかのように穏やかな表情になって、


「はい、昨日のオオカミ竜オオカミの肉」


あかりが解体して処理したオオカミ竜オオカミの骨付き肉を受け取って<池>に戻り、バリバリと貪った。


それと同時に、ビアンカは、キャンプ用のコンロで作った昼食を久利生くりうに届けた。


正直、<戦場飯>みたいなものだったらしいが、久利生くりうは、


「ありがとう」


と微笑んでくれたとも。


そしてきたるは腹ごしらえも済んで寛ぎ、自分だけの池でゆったりとまどろんでいた。


戦いとなれば恐ろしい姿を見せる彼女も、こうしていれば可愛いもんだ。


ただし、クロコディアとしてはそれなりにいい年齢でもある。彼女が後どれくらい生きるかは正確には分からないが、後十年くらいはいけるかもしれない。


それでも、久利生くりうの子ができれば、きっとそれが最後の子になるだろう。


しかも、久利生くりうとの子ということで、ひかりあかりまどかれいのように<先祖がえり>を起こす可能性も高い。俺とひそか達との間では約十パーセントの確率と見られてた。となると、きたる久利生くりうの場合もそれに近い確率で起こると考えるのが自然だな。


だから、生まれた途端にきたるに食べられてしまったり、育児放棄されることも十分に想定し、備えなきゃいけない。


俺達が生きている場所はそういう世界だというのを、忘れちゃいけない。


その上で、きたるに子殺しをさせたくもないしな。




でもまあ、今はゆっくりと余韻に浸ってればいいさ、きたる


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