來編 ここに生きる雄の宿命

人間はやけに味に拘ることでついつい資源を無駄にしてしまいがちだが、あかり達はまだそこまで拘りもない。食べ物だと認識できないものはさすがに避けるものの、『食べられるものは食べる』が基本だ。


もっとも、今回の場合は、きたるが仕留めた獲物なので、後できたるが食べるために加工してるだけだな。


一方、そのきたる自身は、さすがに一人では食べきれず、残りを川の底に埋めていた。クロコディアの習性だ。


とは言え、肝心の埋めた場所を忘れてそのままというのが多いらしい。


それでも、川底に埋められた獲物は他の生物の餌になり、無駄にはならないが


あと、モニカとハートマンとグレイは、仮設の資材置き場に戻って自動小銃の弾丸の装填やらを始めてた。その後に自分達のメンテナンスも行う予定だ。


ちなみに、あかりが投げ捨てた自動小銃は、ドーベルマンMPMが回収している。


三機のドーベルマンMPMが、十数機のドローンと連携して周囲を警戒。現時点では脅威となるものが存在しないことも確認。


テレジアもグレイ達に合流して、家にはビアンカと久利生くりうの二人きりだ。


オオカミ竜オオカミの襲撃の間はさすがにそんなムードにもなれなかっただろうが、状況が終了したとなれば二人とも切り替えてくれるだろう。軍人だし、その辺りは慣れてるだろうと思う。


あかりオオカミ竜オオカミの解体を終えてからはそのまま服を脱いで簡易シャワーで体を洗い、テレジアが用意してくれた着替えを受け取って、


「ありがと♡」


と礼を返してそそくさと身に着け、テントにもぐって眠ってしまったようだ。


ビアンカと久利生くりうのためにテントで夜を明かすことについては、まったく気にしていない。


が、きたるの方はと言うと、オオカミ竜オオカミ相手に大暴れしたことである程度の発散はできたものの、やはり不貞腐れた様子で<池>に戻って寝てしまったのをモニカが見ていた。


すまんな、きたる。お前の気持ちを蔑ろにしたいわけじゃないんだ。だから、明日はその分、思う存分、久利生くりうを襲えばいい。


この辺りについても、男同士ですでに情報交換は済んでる。<種馬>的な扱いになることもあるのは、ここに生きる<雄>の宿命だというのも分かってくれてる。だからちゃんとお前のことも愛してくれるよ。


でも、アレだな。やっぱり<それ用の家>も必要だな。俺が光莉ひかり号のキャビンをそういう形で使ってたように。


まあ、あかりきたるは気にしないかもしれないが、さすがにビアンカと久利生くりうは落ち着いてできないだろう。俺だって他の家族がすぐ横にいたら落ち着かない。


明日は取り合えずきたるが満足するまであかりとビアンカには外で作業しててもらうとして、家の建設も始めないとな。


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