來編 ご近所挨拶

そんなこんなで、


<ご近所挨拶>


は、あかり達の圧勝で終わった。おそらくあのオオカミ竜オオカミの群れは今後はもう迂闊に襲ってはこないだろう。なにも無理をして襲う必要もない。


ただ、一方的に痛めつけるのは申し訳ないので、ドーベルマンMPMをさらに増産し、それでまた<畑>を作りオオカミ竜オオカミ達の餌となる草食獣達を確保して、あかり達を襲わなきゃいけない理由をさらに下げてやろう。


その上で、テレジアとグレイ及びドーベルマンMPMによる防衛網を敷けば、それこそ襲えまい。


彼らだって犠牲は少ない方がいいに決まってる。


実際、そう達の群れと縄張りを接するオオカミ竜オオカミ達も、<畑>を目当てに集まってくる草食獣達だけで間に合ってるから、そう達を襲うこともない。


それよりは、他の群れから巣立ったレオンがボスの座を狙ってそう達に戦いを挑んでくることの方がよっぽど危険だ。


正直、俺やシモーヌは見た目にもほとんど変わらないものの、そう達はもうすっかり<おじさん>になってきてる。


分裂するかと思った群れはそのままだが、やっぱり実態自体は、<そうの群れ>と<かいの群れ>に別れてて、あくまで寝床を共有してるに過ぎない状態だ。


でもまあ、上手くいってるならそれでいい。


しかも、若い雄がボスの座を狙ってきても、そうかいを、かいそうを、互いに援護するから、負けないんだ。


これが人間の場合、


『卑怯だ!』


みたいな話にもなるかもしれないが、何度も言うようにそれはあくまで人間の感性での話。そう達には通じない。この世界では通じない。


さらには、そうかいだけでなく、りんの群れもそうかいの援護を受けられてる。


りんのヤキモチが酷くて他の雌が定着できず、群れはちっとも大きくならなかった。


なので、一時的に他の雌がいてゆうと番って子供ができても結局は出て行ってしまうため、今現在も、二人の子供達であるあんほうろうを加えた五人だけの群れになっていた。


ちなみにあんは、雄雌の区別が確定していない、いわゆる、


<性分化疾患>


だと見られている。


だから、<一人前のレオン>になりきれず、しかも何だかドーベルマンDK-aの号機のことがお気に入りらしく、一緒に行動することが多いようだ。


そのことについてはいずれ機会があれば詳しく触れよう。


今はそれよりビアンカと久利生くりうだ。




が、その前に……


オオカミ竜オオカミの群れが去ってもあかりは家には戻らなかった。ローバーに積んであったテントを手際よく張り、その前で、死んだオオカミ竜オオカミをさくっと解体し始める。食材として加工するためだ。


と言っても、オオカミ竜オオカミは、ボクサー竜ボクサーに比べても肉質が若干大味で、人間の味覚には、少なくとも俺やシモーヌの味覚には合わなかった。以前、ビアンカが退けた際に死んだオオカミ竜オオカミを回収して食べてみた印象だ。


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