來編 熱に浮かされて

アリス参号機とドライツェン参号機は、完成間近だった。ボディそのものはすでに出来上がっていて、後は細かい部分の調整だけだ。


正直、エレクシアやセシリアやイレーネを渡すのは辛い。エレクシアは元々俺のものだし、セシリアは家事全般をサポートしてくれてるし、イレーネを母親のように思ってるれいのことを考えると引き離すわけにもいかない。れい久利生くりうを警戒してるからな。


あかりきたるがすぐ惚れたと言っても、皆が皆、久利生くりうに惚れるわけじゃない。


ひかりは興味もないようだしまどかれいと同じく警戒してるし、しんも完全にスルーだし、うららさいも関心を持ってない。


超絶イケメンであっても、これが現実だ。


きゃーきゃー騒ぐ女性が目立ってしまうから、


『女性は皆、イケメンに目がない』


という印象があるだけで、実際には、


『一口に『イケメン好き』と言っても好みのイケメンの系統も人によってそれぞれ違う』


さ。一人が全員に惚れられるわけじゃない。


そもそも、久利生くりうは見た目が透明だから、


『見える可視光線の波長の関係で透明には見えない』


クロコディアにとってはそれほど気にならなくても、透明に見えてる種族からしたらやっぱり奇異にも感じるだろうし。


シモーヌやビアンカは、ファンデーションで少しでも人間に見えるように工夫してるけどな。


久利生くりうはその辺り、気にしてないようだ。


が、あかり及びビアンカと交際する決心をしたことで、彼も、二人のために、ファンデーションを使うことを決めた。


「見た目が人間に近い方がいいだろうからね」


ということで。





新暦〇〇三十二年五月九日。




一方、そうやって<久利生くりうのハーレム>が出来上がったことを知らないきたるも順調に回復し、三日後には治療カプセルから出てきた。


「どこにも異状ありません。完全に健康です」


エレクシアのお墨付きをもらって。


すると、さっそく、


「あ~っ!」


久利生くりうを見付けて駆け寄って、彼の体に自分の体を摺り寄せる。ワニ人間クロコディアの雌が気に入った雄にやるやつだ。


熱に浮かされて一時的にってわけじゃなかったのがこれで確認できてしまったな。


「はっはっは! 我が夫はモテモテだな! さすがだ!!」


法律がないので<法律婚>もなく、役所に書類を提出する必要もないことで、あかりはもうすでに結婚したつもりになっている。


だがまあ、それでいい。久利生くりうも受け入れてるしな。


その上で、自分のパートナーがモテるというのは、『価値が高いから』という証明にもなるのか、ご機嫌だ。


ただし、彼が他の女性ばかりを大事にしてて自分を見てくれないとなると、それはまあきっといい気もしないだろうな。


「はは……」


きたるに抱き付かれて苦笑いになっている久利生くりうを、あかりとビアンカがニヤニヤと笑いながら見ていたのだった。


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