來変 譲渡
で、
「
俺は、単刀直入に切り出した。
彼を相手に下手な小細工や駆け引きをしたところで俺が勝てる道理がまったく見えないから、余計なことは一切無しだ。
すると
「……僕達にとってはこの上ない話だけど……」
そう言いつつ、
「それで、条件は……?」
と切り替えしてきた。
AIやメイトギア達は、
『コーネリアス号を明け渡す』
と俺が言ったところで、コーネリアス号のAIはそれを認めない。あくまで現在のコーネリアス号を管理する権限は、仮とは言え俺にあり、
だから、
『コーネリアス号を好きに使っていい』
とする上で必要となる<条件>を確かめてきたってことだな。
本当に大した男だよ。
ま、彼なら十中八九そう言ってくるとエレクシアも太鼓判を押してくれたから提示できた話でもある。
そもそも、アドバンテージは俺の側にある。
もっとも、以前にも話したと思うが、そういう大前提を蔑ろにした違法なAIは、人間を守ろうとするAIが支配する今の人間社会じゃ即刻異物と見做されネットワーク上からも排除されて、何もできなくなってしまうんだ。
この現実がある以上、この提案はまったくもって対等な立場のものじゃない。不平等極まりないものだ。
それを承知の上で、俺は言った。
「そちらの生活に支障が出ない範囲で、コーネリアス号の全機能をこれまでどおりこちらも利用できること。それが条件だ」
立場が対等じゃない以上、それは<条件>と呼ぶのもおこがましい茶番でしかない。けれど、敢えてこの茶番が必要だと俺は思ったんだ。
「分かった。その条件を飲もう…」
こういう風に言わないと
自分が人間じゃなくてコーネリアス号に対して何の権利も持たず、AIを味方に付けられないことを承知してる彼ではね。
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