來編 新しいハーレム

『ご両親の意向もあると思う。それを窺ってからでもいいんじゃないかな…』


それまでの彼からは思いもよらない明らかに歯切れの悪い言葉にも、あかりは容赦なかった。


三人を見守っていたイレーネが掲げてたタブレットの中に俺に向かって、


「お父さん! 私はビアンカと久利生くりうを幸せにしたい! いいよね!?」


きっぱりと言い切った。


そこまで言い切られたら、俺も、


「そうだな。俺はあかりを信じてる。あかりがそう決めたのなら、反対はしない」


イレーネが掲げたタブレット越しにはっきりと応えた。しかも、


「私も、母親としてあなたの決意を支持する。だから久利生くりう、観念なさい」


シモーヌまで。


彼女としては、久利生くりうの思いがけない姿に少々悪戯心も湧いてしまったようだ。


「ええ……?」


久利生くりうが吐息のような溜め息のような情けない声を出す。


俺としても、これまでの彼の姿からは想像もできないそれに、正直、


『大変なのに見初められてしまったな、久利生くりう……』


とも思えてしまう。


けれど、同時に、


『でも、シモーヌも言ってた通り、観念してくれ……


それに、あかりは俺にとっても自慢の娘だ。そのあかりが選んだ久利生くりうなら大丈夫だと思う』


そんな風にも思えるんだ。


だから、


久利生くりう、娘を頼む……」


と頭を下げた。


ここまで言われてしまうと、彼としても腹が据わったらしく、


「……分かりました…錬是れんぜがそう言うのなら……」


それまでの困惑した様子とは打って変わって引き締まった表情になり、応えてくれた。


そう。追い詰められた時の決断力はさすがだということなんだろう。


野性の直感に従って即断即決が身上のあかりにとっては、そこも魅力的だったのかもしれない。


こうして二人とも受け止めてくれることになって、あかりは、


「おっしゃ~っ!」


とガッツポーズをとり、ビアンカは、


「少佐、ありがとうございます。私が必ず幸せにします!」


涙を滲ませながら笑顔になった。


普通なら<両手に花>的に、


『男にとって都合のいい展開』


とも思えるそれが、俺には少しばかり身につまされるような気がした。


何しろ、これであかりとビアンカについては解決したとしても、ここにさらにきたるも加わってくるわけで、


『大変だな…久利生くりう……今度はお前の番だぞ……』


なんてのが頭をよぎった。




俺がここに遭難して、ひそかを、じんを、ふくを、ようを愛したように、これからは久利生くりうがそれをすることになる。


まあ、彼ならきっと俺なんかよりもっと上手くやってくれるだろう。


ただそうなると今度は、<新しいハーレム>が出来上がるわけで、それが同じ場所に住んでいるというのも少々変か。


『ちょうど、アリス参号機とドライツェン参号機も完成するところだし、それがいいか……』


俺も、決断していたのだった。


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