翔編 防護措置

オオカミ人間ルプシアンについては、これまでほとんど接点がなかったから触れてこなかったが、生態としてはレオンと大きく違わないので、あまり詳細に触れても仕方ないかもしれない。外見が何となくオオカミを連想させるというだけでしかないし。


ただ、『凶暴さ』という点ではレオンを上回るかもしれない。そして群れも少し大きいか。


同じ<オオカミ>の名を冠したオオカミ竜とも、生態としては似通っているかもしれないな。生息域があまり重ならないというだけで。


なお、オオカミ人間ルプシアンの生息域にも、もちろん草食動物は結構いる。加えて、この荒野の辺りだと、ダチョウ人間ストルティオンもいるな。


ダチョウ人間ストルティオンは、ダチョウと同じく空は飛べず、代わりに足が速い。最高速も俊敏性もオオカミ人間ルプシアンを上回り、しかも、飛ぶことはできないと言えどジャンプ力も高く、空中で羽を広げることで姿勢を変えることも軌道を変えることもでき、そのトリッキーな動きでオオカミ人間ルプシアンさえ攪乱して、易々と狩られてしまうこともないようだ。


ある意味、<荒野のトリックスター>って感じかな。


でもまあ、草原にも近い種がいるので、荒野だけとも限らないが。


ちなみに空を飛ばないからか体も結構大きい。分かってる範囲でも平均は百七十センチをこえ、雌でも百八十センチを超える個体が少なくない。加えて、その大きな体を支える脚のキック力は、一蹴りでオオカミ人間ルプシアンの成体の雄を死に追いやるシーンがドローンのカメラに捉えられることもあった。


その事例はたまたま打ち所が悪かったのだとしても、一対一ではオオカミ人間ルプシアンでさえ易々とは勝てないのは確かだな。


でないとこの世界では生きていけないか。


だから、無理にダチョウ人間ストルティオンを狙うこともそう多くないと思われる。他に獲物としては猪竜シシガゼル竜ガゼルもいるしな。


と、今はダチョウ人間ストルティオンの話じゃなかった。


オオカミ人間ルプシアンの群れに監視されながらも、アリニとドラニは大して気にするでもなく作業を続ける。


そんな二機を見定めているのか、それとも隙を窺っているのか。


もっとも、生き物と違って休む必要もないアリニとドラニにそんな隙が生じるわけもなく、俺が家に帰りつくまで動きはなかった。


その後も、光莉ひかり号が常にモニターしていたが、特に動きもなくいつの間にかいなくなっていたそうだ。


しかし、こうして様子を窺ってくるくらいだから、実際に人間が暮らす村として機能させるには十分な防護措置が必要になってくるか。


手っ取り早いのは塀で囲うことだな。


ある程度は村としての体裁が整ってきた辺りで塀も作った方がいいかもしれない。


ドライツェンの量産が進めば周囲を監視してもらった方が確実だとしても、何十機も揃えるのはさすがに相当先になるからなあ。


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