翔編 AIの中の仮想AI
「対応は以上でよろしいでしょうか?」
屋根から下りてきたドラゼと並んだアリゼが、俺に問い掛けてきた。
メイトギアのほとんど人間と変わらない自然な発声とは明らかに違ういかにもな合成音声がむしろ新鮮な印象さえある。
以前はしゃべるところまではいかなかったものが、それ用のデータを蓄積することで、
『アリゼとして』
しゃべっているんだ。
ちなみに視覚的には、アリゼの口をイメージしたインジケータが光ることで<しゃべってる感>を出している。
制御しているのは
そして、
いずれそれ用のAIを作った時にデータをコピーするためのものでもある。
これは、コーネリアス号で運用されているアリス初号機とドライツェン初号機も同じだ。コーネリアス号のAIの中に、<アリス初号機用の仮想AI>と<ドライツェン初号機用の仮想AI>が作られてる。
前にも言ったが、コーネリアス号のAIのデータでさえ有機的に紐付けされて蓄積されているから、そのままでは次元の違う旧式なAIにはまったく入りきらない。紐付けされているデータを解く作業は、AI自身にやってもらったとしてもそんなことをするなんてのがそもそも想定されてないから、やったとしても何年もかかるという試算が出た。
だいたい、どのデータが必要でどのデータが不要かということ自体を総当りで確認していかなきゃいけないというのがもう現実的じゃない。
人間にやらしたらそれこそ<苦役>ってことで訴えられるレベルだ。
となれば、やっぱり新しくそれ用のデータを蓄積する方が手っ取り早いんだとさ。時間はこれも数年レベルでかかるものの、手間そのものは子供を育てるようなものだ。その場その場で何をどうするのか学んでいってもらう形ではある。
だから、
『
感じになるのか。
まあ、人間にはちょっと感覚的に理解し難い話かもしれないが。
実は俺も完全には分かってない。
なお、『子供を育てるようなもの』と言ってももちろんロボットは子供じゃないから人間のように付きっ切りになる必要もないし、そもそもリンクしてるので実際には人間の親子以上に常に一緒にいることになるんだけどな。
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