翔編 それもアリかも
新暦〇〇三〇年十月十五日。
そうして、
で、その縄張りは、新しい集落の辺りだった。
これは偶然ではなく、俺がそこにちょくちょく顔を出すことを知っていて、しかも集落を作るために開墾した際に、その辺りを元々縄張りにしていたアクシーズが警戒して近付かなくなったことでできた空白地帯に上手く滑り込んだんだ。
さすが、ただ力尽くで縄張りを奪えばいいというだけじゃない強かさを感じるよ。
タイミング的にも、元いたアクシーズが慣れて戻ってくるまでの間に収まれたんだから。
戦わず縄張りを奪われた形になったアクシーズがいずれ取り返しに来るかもしれないものの、そこは一人前のアクシーズとして縄張りを守っていくことになる
だから俺としては基本的に口出しはしないつもりだ。
まあ、危ないとなればドローンとかを使って援護もするかもだが。
そんな中、集落の開発も着々と進んでいた。
ほぼほぼアリゼとドラゼに任せて、数軒の家を建て、そこでの人間の暮らしをシミュレーションする。
取り敢えずの住人は、アリゼとドラゼだな。
二体は集落の中央に立てた<最初の家>、ビアンカのそれのいわばコピーの家を住処として、暮らし始めた。
それがすっかり馴染んだ頃、ビアンカも<単身赴任>から帰ってきた。
「ただいま、帰還しました」
軍人らしい敬礼で俺の前に立つ彼女に、
「おかえり。本当にご苦労だったな」
と声を掛けさせてもらった。
「いえ、
だとさ。
そんなビアンカに、
「え~? それじゃ毎日遊べないじゃん」
と口を尖らせる。
でも、すぐに、ビアンカと二人して、
クスクスと笑い始めた。本当に仲が良いな。この二人。
まあ、<本来のコーネリアス号乗員、ビアンカ・ラッセ>自身は老化抑制処置も受けている人間だからな。実年齢は
なお、人間としての形質を持って生まれた
正直、俺の老化抑制処置の効果が切れる方が早い可能性が出てきたな。
できれば俺が二人を看取ってやりたかったんだが、もしかすると俺の方が先にということもあり得るということだ。
とは言え、本来ならそれが普通か。
もしそれなりに人間社会ができてたら、二人だけを残して死ぬわけじゃないし、うん、それもアリかもしれないな。
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