翔編 求められるものが違う

先日のレオンやオオカミ竜オオカミ襲撃の件について、


『ドーベルマンDK-aをさらに作ってそれによる<数の暴力>で押し切る』


ということを思い付かなかった俺の判断は、もしかすると批判されるべきものかもしれない。


今は俺がそんなつもりないのを分かってくれてる<家族>だけの集団だからそこまで言われないだけで。


将来、ここにできるであろう人間社会を管理運営することになる人間の苦労が偲ばれる。なるべくそういうことも含めて深慮できる人間を育てていきたいとは思うものの、それ自体が自分の思うとおりにいくとは限らないわけで、光莉ひかり号やコーネリアス号のAI、エレクシアをはじめとしたメイトギア達がなるべく長く稼動し続けてくれて、サポートしてくれることを願わずにはいられないよ。


ちなみにエレクシアがその辺りの進言をしなかったのは、基本的にその時点での戦力で、十分、あの結果が得られることを予測できていたからだ。むしろ、<ビアンカの居眠り>というのは、想定されていた事態の中ではかなり悪い方のそれだったらしい。実際にはもっと楽に対処できていたはずとのことだった。


が、それでも俺はビアンカを責めるつもりは毛頭ない。彼女一人に任せた俺の責任は変わらないしな。


なのでそれは置くとして、しょうりょうの話だ。


しょうの母親のようも厳しかった。狩りも、ある程度できるようになってくるとわざと難度の高い相手を選んで襲わせるようにしていた気がする。小動物や鳥だけじゃなく、ボクサー竜ボクサーを狙わせたりもしてたんだ。


正直、まだ未熟だった当事のしょうにとって、危険な相手だった。空こそ飛べないものの、ボクサー竜ボクサーは肉食獣としては決して弱いわけじゃない。マンティアンのじんや要人警護仕様のメイトギアであるエレクシアという、ボクサー竜ボクサーより圧倒的に強いのが俺の仲間にはいただけで、普通の人間の俺じゃ銃を持ってても勝てない可能性が高い。


なので最初は反撃を受けてあわやということも何度もあった。


だがその一方で、向こう岸に渡ってやはり狩りをしていた時には、ヒト蜘蛛アラクネに襲われ、しょうを逃がすために自分が囮になったりということもあったから、


『死んでも構わない』


と思ってるわけでもないことは分かってる。


りょうに対するしょうの厳しさも、それだ。


個としての強さが生きるための絶対条件であるマンティアンやアクシーズは、人間とは求められるものが違う。だから人間のような<高い協調性>を養うための育て方とは違うんだ。


それもあって、俺は、人間のやり方を彼女達に押し付けようとは思わない。


本音を言えば『見てられない…!』と感じてしまうことはあるものの、それは単なる人間の感傷に過ぎない。しょう達にとって人間の感傷は余計なお世話なんだ。


それに、りょうボクサー竜ボクサーに挑みかかって逆に脚に喰らい付かれて地面に引きずり落とされた時には、しょうは、群れで襲い掛かろうとしたボクサー竜ボクサーを猛然と蹴散らし、りょうボクサー竜ボクサーの一対一の戦いを守ったりもしたんだよな。


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