翔編 生態としては

新暦〇〇三〇年九月二十八日。




アクシーズであるしょうの朝は早い。基本的に夜が明けると活動を開始する。


パートナーのたいはいるものの、割とそれぞれ単独行動が多い。気に入った相手と長くつがいになることもあるのと同時に、意外と頻繁にパートナーを変えたりする者もいるようで、個体差が大きいみたいだな。


なお、しょうの母親のようは俺のことを気に入ってくれたのか、一筋だった。と言うか、俺みたいなのは他にいないというのもあるのか。


しょうは、まだ幼かった頃、レオンであるふくの息子であるかいのことが気に入ってたようだ。ただ、遊び方が乱暴で、しかも、サルのそれに鉤爪をつけたような足をしてるもんだから、しょっちゅう、流血の事態に至ってた。


よくまあ致命的な怪我にならなかったものだと思うものの、その辺りは、やはり野生の生き物だけあって丈夫と言うかお互い本能的に心得てると言うかなのかもしれない。かいは、子供の頃から体が大きくて肉体的には恵まれてたもののとにかく根が臆病者で、ちょっと相手が強いと見るやすぐにヘタれるタイプだった。


そんなかいが今では立派にボスの役目もできるようになったのは、ひょっとするとしょうのおかげもあるかもしれないな。


戦いの勘をその頃に養うことができたのかも。


とは言え、お互いもう随分と長く顔も合わせていないし、ひょっとしたら忘れているかもな。


なにしろ、しょうの活動範囲は俺達の<家>の周囲半径五キロ程度の範囲だし、かいはそこから百キロ離れたコーネリアス号がある草原だ。


アクシーズは、鳥のように羽ばたいて飛ぶことができない。多少は羽ばたくことができても、あくまで浮力や推力を多少補う程度で、羽ばたきだけで飛び上がることができない。それをするには体が大きすぎるんだ。その代わり、強力な武器でもある<脚>は非常に強靭で、垂直跳びで二メートル以上跳び上がることさえある。


樹に上り、そこからさらに空中に飛び上がってから羽を広げて滑空するのが基本的な飛び方だった。上手く風を掴まえれば百メートル近く滑空することもあるようだ。


ひょっとすると崖などから飛べばそれこそ数キロ飛ぶことだってできるかもしれない。


ただ、俺達がいる台地の上は標高差がせいぜい数百メートル程度しかないほぼ平らな土地なので、そういうところにアクシーズやその仲間がいるのはドローンでの調査で分かっているものの、やっぱりそんなに長距離を飛ぶことはないらしい。


なお、滑空するために必要な高い樹がない草原などを生息地にした<鳥人間>は、飛ぶことそのものを諦めたらしく、ダチョウに近い生態を得たものもいる。フラミンゴに似た外見を持つものもいるが、基本的にはほとんど飛ぶことはないようだ。


なお、アクシーズは鳥人間の中でもとりわけ凶暴な種ではある。そして強い。密林においてはめい達|マンティアンに次ぐほどの強さがあるだろう。


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