翔編 本来の姿

アクシーズであり非常に強い攻撃性を持つしょうは、その、ローティーンの少女のような外見を持つのとは裏腹に、樹の上から下界を睥睨するかのように鋭い視線を送る。そうして獲物に狙いをつけるのだ。


普段は小動物や鳥、時には河に出て泳いでいる魚をも捕らえるが、アクシーズとしてはほまれ達パパニアンを襲うこともある。


とは言え、しょうや、しょうの息子のりょうしょうの弟のすいは、ほまれ達を狙うことはないけどな。


しょう達は、ちょくちょく見かけることもあるほまれのことは間違いなく覚えてくれてて、仲間だと認識してくれてるんだ。


その一方で、しょうのパートナーであるたいは、マンティアンのめいのパートナーであるかくと同じくそういう認識は持っていないから、襲いかかろうとすることはある。


しかしそれについては、ほまれを警護しているメイフェアや、俺の子供達を見守っているドローンが邪魔をすることで守れている。


それと同時に、万が一、守りきれなかった時についても覚悟はしている。たいによって犠牲が出たとしても、それを理由に彼を責めるつもりはない。野性に生きる以上は、むしろそちらのほうが本来の姿だからな。


『子供達を守りたい』


というのはあくまで俺の<エゴ>でしかないとわきまえておかなければと今でも自分に言い聞かせてる。


それを忘れては、この生と死が隣り合わせの世界で生きるのは辛いだけだ。人間の世界の感覚は通用しない。


辛うじてここまで家族に大きな被害もなくこられたからついつい忘れそうになるが。




なんていう俺のあれこれとは関係なく、しょうは逞しく生きている。


息子のりょうが生まれた時も、母親のようが自分にしてくれた通りに大切に育てていた。


アクシーズを含む<鳥人間>は、人間の基準で見ると妊娠期間が非常に短く、赤ん坊も超未熟児にも思える姿で生まれてくる。体重は僅か数百グラムしかない。


にも拘らず力は恐ろしく強く、うっかり指なんか掴まれた日には骨ごと握り潰されるかと感じるほどだ。これは、母親の胸に生えた羽毛にしっかりとしがみついて常に乳を吸い続けるための能力なんだろうな。母親が空を飛んでる時にも振り落とされることはまずない。万が一それで振り落とされるような弱い子供はその時点でふるいに掛けられる形だな。


とは言え、落ちても死んでいなければ一応は拾い上げて助けようともするらしい。しかし、それでも何度も落ちるような子供は、結局、生きてはいけない。


そうやって落ちた子供をメイフェアやイレーネに頼んで助けようとしたこともあったが、何度も落ちることですべて死んでしまった。


過酷ではあるものの、そういう力の弱い子供は大きくなれたとしてもやっぱり生きてはいけないんだろう。


だからか、大きくなって自力で飛べるようになってくると、今度はスパルタ式の<訓練>が子供を待ち構えているのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る