走・凱編 朋群

リヴィアターネの件の真実がどうであれ、もう俺には関係ないことだけどな。この惑星から出られない以上は。


と、ビアンカと一緒に集落候補地の開発計画を考えてると、彼女が不意に、


「ところで、この惑星には名前があるんですか?」


などと訊いてきた。


それに対して俺は、


「ああ、名前ね。実はまだ考えてないんだ」


正直に答える。


と言うのも、俺自身はあまり気にしてこなかったんだよな。何しろ誰かに紹介するわけでもなかったし。


『ここ』とか『この惑星』で間に合ってたんだ。


「そういうことが気にならないんですか?」


などと訊かれても、


「そうだなあ。あんまり」


としか応えようがない。まあ俺の性格だな。


エレクシアも、


「それがマスターですから」


って感じで素っ気ない。


「じゃあ、せっかくですからここで名前を決めませんか?」


ビアンカの申し出に、俺も、


「うん、そうだな。必要だと感じる人がいるんなら、決めてもいいか」


そう思えた。


そんなわけで、エレクシアが木を伐採して広げてる間にあれこれ考えてみた。


光莉ひかり……じゃさすがに安直か。<黎明>……<明光みょうこう>……<蓬栄ほうえい>……


って、そもそも第一発見者は俺じゃないんだよな。今のところ、ビアンカ達が第一発見者ってことになるのか』


なので、


「すぐには思い付かないし、それに先に発見したのはビアンカ達だろ? 帰ってからシモーヌやひかり達も一緒に考えよう」


って言わせてもらう。


「そうですね。それがいいです」


となった。




で、家に帰って家族で集まったんだが、


「なんか、いまさらって感じがする」


あかりが頭を掻きながら言った。


「今までずっと気にしないでやってきたし、急に言われても思い付かないよ」


「確かに……」


それが俺達だった。


拘らないことは本当に拘らないんだ。


だから、


「シモーヌやビアンカが先に発見したんだから、二人で付けたらどうかな?」


本音を言うと面倒臭いから丸投げしたってところなんだが、


「でも、ボスは錬是れんぜだから」


って、シモーヌが俺に返してきた。しかもビアンカまで、


「私もそれでいいと思います。私達は上手く折り合えなかったけど、錬是れんぜはもうここの住人として根付いてるし」


とか何とか、丸投げしようとしたら丸々返された。


むう……!


「やっぱりお父さんが決めたらいいと私も思う」


ひかりまでそんなことを。


もうことここに至って俺の方としても、


「分かった分かった。じゃあ、俺が勝手に決めていいんだな?」


一応念押しさせてもらった上で、


「はい、それでいいと思います」


「異論はありません」


とまで言われちゃあ、覚悟を決めるしかない。


「よし、じゃ、<朋群ほうむ>でどうかな? 『ともの群れ』で朋群ほうむ。家(ホーム)とかけてみたんだが」


あまり難しく考えても思い付きそうになかったので、パッと頭に浮かんだを提案してみたのだった。


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