走・凱編 存在

<畑>を管理しているのは基本的にドーベルマンDK-aだ。不気味な得体のしれない動物がいるということで最初は警戒されてたが、今では仮設の待機小屋に戻り姿が見えなくなると、警戒はしつつも畑の周りに動物が集まってくる。


メイフェアとイレーネがコーネリアス号に搭載されていた<井戸掘りロボット>を使って井戸を掘って水場も作ってるから余計にな。


それにしても、いかにもロボットらしいロボットがぽつんと一体だけで畑を管理してる光景は、正直、哀愁も漂うな。ポストアポカリプス感があって。


現時点ではこの惑星における人間の痕跡はコーネリアス号由来のものだけだが、例の不定形生物の、自然発生した生物としては考え難い生態を鑑みると、人工的に生み出された存在である可能性は否定できないと考えている。


もっともそれも、この惑星にかつて知的生命体がいた証明になるとは限らないけどな。俺達のように他の惑星から来た可能性も否定できないし。


それでも、この惑星で完全に自然の一部として定着しているようなので、来たとしても相当な昔なんだろう。


あと、その不定形生物の習性として『とにかく生物の遺伝子や情報を収集する』というものがあるとするなら、わざわざ俺達のところに現れないのも、河から離れていることに加え、コーネリアス号が不時着した時には見慣れない新しい生き物がいたことでそれの<情報>を得るために襲撃したものの、一通り収集を終えたことで必要がなくなったと考えられる。そうでなければ、コーネリアス号と行き来する際に河を通るからその度に襲われて当然のはずが、最初に襲われた時以来、襲撃がないことの説明が付かない。あの時はちからを捕食しようとした奴がついでに俺達もって感じだったんだろう。


だが同時に、人間に恨みを持つ、もしくは人間を嫌っている何らかの存在もあの不定形生物の中には存在していて、その形質が発現した生物として形を持つと、人間を狙ってくるとも考えられるのかもしれない。


きょうがくのようにな。


しかしそれも、がくの一件で対応策のヒントが得られたから、それに向けての準備も始めてる。今の時点ではドローンで誘導することになるだろうが、いずれはダミーの集落をつくってそこに誘い込んで、ダミーの集落を襲うだけで満足するならそれでよし、もしそうでないなら…という風にしようと思っている。


殺す必要がないなら殺したくないんだ。それに、きょうのような例はともかく、生物としてそもそも無理があっておそらく長生きできなかったであろうみずちや、この台地の上では他に近い生物がいないので繁殖も難しいであろうがくのような存在は、俺達が手を下さなくても自然といなくなるだろうし。


きょうがいたグンタイ竜グンタイだって、生物として過剰な繁殖力の所為で逆に自滅するパターンだろう。


いずれにせよ、同じこの惑星上に生きる存在として、生存競争には勝たないといけないが、避けられる戦いは避けたいんだ。


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