人間以外の生き物との共存という意味では、人間とそれ以外の生き物とを明確に区別している今の人間社会だって、別に人間以外の生き物を無意味に攻撃しないようにはしているからな。

あくまで、人間の身体生命に危険が及ぶ場合のみ対処するという形を取ってるだけだ。

なので、多くの惑星では、＜遊興としての狩猟＞は禁止されてる。加えて、ペット等の殺処分も禁止されているところは多い。言葉は悪いが、言ってしまえば＜人間に対する殺処分＞である死刑制度が廃止できたことで、

『人間の殺処分が止められたんだから、人間以外の動物の殺処分も』

という流れで禁止できたらしい。

まあこれも、引き取り手のないペットを保護する施設が確保できたことと、その施設が無理なく運営できるのもロボットが普及したおかげというのもあるそうだが。

ただ、これについては、今なお、

『牛や豚や鶏は殺すのに、ペットは守るのか？』

という意見はあるそうだ。

この辺りの折り合いをつけるには、まだ時間がかかるのかもしれない。

ここにできていく＜社会＞でも、同じ葛藤は残りそうだなという気はする。なにしろ、駿（しゅん）やレッド達の群れの仲間が死んでもそれを食料にしないのに、他のボクサー竜（ボクサー）については食料にするしな。同じボクサー竜（ボクサー）の中で『食料にする・しない』の区別ができてしまっているんだ。

人間としての感覚が、そういう割り切りをどうしても拒んでしまう。

まあ、今の時点ではそこまで難しく考えなくても大きな問題にはならないので、俺個人の惑いで済んでるけどな。でも人間が増えてくるとその種の矛盾を無視できないのも出てくるだろうなというのはある。

こればっかりは＜感情の動物である人間＞が根源的に抱える自己矛盾だろうから、そうそう解決はできないんだろう、子孫達に任せるしかないのか。

しかし、走（そう）達にはあまり関係のない話で、畑で餌を食べていたブタに似た動物の群れを襲い、自分達の糧を得ていく。

特に、走（そう）のグループでは釈（しゃく）が、凱（かい）のグループでは旋（せん）がリーダーとなって、容赦なく仕留めていった。

ただし、獲物にされる側もただ蹂躙されてるわけじゃない。群れのボスらしき一回り体の大きな個体などは、仲間を守るために果敢に立ち向かってきたりもする。

見た目はブタに似ていても、習性はイノシシに近いからな。群れになると結構狂暴なんだ。密林に住む近似種は精々五十キロ程度だが草原に住むこちらは大きな個体ともなると体重も百キロを優に超える。レオンでさえ、油断してると返り討ちに遭うだろう。

そんなボスらしき大きな個体の相手は、走（そう）や凱（かい）の役目だった。容易には倒しきれないので、獲物にすることはあまりない。狙うのは基本的に子供や弱っている個体だ。

走（そう）や凱（かい）がそれぞれボスらしき個体の相手をしている間に、雌達が獲物を仕留める。

その点、凛（りん）の場合は、按（あん）がまだ未熟なので苦労しているようだ。普通なら何人かの雌でチームを組んで役割分担するんだけどな。

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