明編 始祖からの想い

新暦〇〇二八年十二月十日。




現在の人間の社会は、人間自身の攻撃性は抑えつつ、同時に外敵などの脅威に対抗するためにロボットを発展させてきたんだってことが、今なら分かる。


ロボットは暴力を恐れない。躊躇うことなく自らを盾として敵の前に立ち塞がって攻撃を受け止め、対処するための隙を作る。


ただそれも、物理的な攻撃には有効だが、精神的な攻撃の前にはなかなか有効なものができないのは実情か。


ああでも、悪質なクレーマーに対抗するために、今では大手企業のカスタマーセンターのオペレーターは基本的にAIが行ってるんだったな。


普段から攻撃的な人間は他人から疎まれ、困っていても助けてもらえないことが多い。そんなことは分かっているだろうに、他人への攻撃をやめない人間も多いんだよな。


でも、ロボットは、どんなに他人から疎まれてる人間であってもまるで気にすることなく助けてくれるけどな。


そういう意味でも、人間はもう、ロボットなしでは生きられないんだなって気もしてしまうよ。


ロボット排斥主義者達は、その見地からも、


『人間はロボットに頼らずに生きるべきだ! もしロボットが使えなくなったらどうなる!? 簡単に外敵に滅ぼされてしまうぞ!!』


とか言ってるらしいんだが、そう言ってロボットに頼らずにコミュニティを作ってるところでは、以前にも言ったように人間を奴隷のように働かせてそれが元で対立が生まれ、それで争いになって瓦解した事例もあるらしい。『外敵に備えろ!』とか言ってた本人が内部に敵を作ってそれで争ってるんだから、いやはや、何をしてるのか分からないな。


ロボット排斥主義者まで行かなくても、


『他人からの攻撃に備えて、強い態度に出られるようにしておかなければ!』


みたいに言ってる人間もいるものの、そうやって他人への攻撃性を隠さないことで、自分がその<攻撃者>になってしまっているんだ。


なんという自己矛盾。


自分が他人にとっての攻撃者になってしまわないためにも攻撃性は抑えないといけないという根拠に、自分がなってしまってるんだな。


ここにできることになる人間社会では、その辺りのこともよく考えてほしいと思う。さすがにロボットを自分達で作れるようになるには相当な年月が必要になるだろうから、外敵と戦う力を、同じ人間を虐げたりする為に使わないことを肝に銘じてほしいと思う。


とは言え、そんな俺の願いが届く保証もないわけで、こればっかりは俺の子孫達に任せるしかないんだろうけどな。


ただ、始祖からの<想い>として、エレクシア達やAIに伝えていってもらえるようにお願いしておこう。


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